俺の夜
ミナミの九龍城を上から下まで飲みたおす!
大阪・味園ビル探訪
【担当記者:スギナミ】
酒色、遊興、演芸、慰安――。かつて、繁華街にはこれらの要素すべてを併せ持つ巨大レジャービルの存在が珍しくなかった。しかし、時の流れは無情なもの。昨年2月に閉館した新宿東宝会館の例を見るまでもなく、こうした”男の遊艶地”的な巨大ビルは過去の遺物となりつつある。いまやレジャービルといえば、女子供が集うショッピングモールばかり。やりきれない思いで安酒を痛飲する僕の耳に入ってきたのは、大阪に今も残る老舗ビルの存在だった。
ビルの中だけで”俺の夜”は完結する
訪れたのはGWの真っただ中。人の群れでごった返す道頓堀から、千日前通商店街を直進することおよそ10分。なんばグランド花月の手前左手に、「どやっ」と言わんばかりにひときわ大きく光る「味園」の電飾文字。敷地面積300坪超、昭和31年開業の味園ビル。老朽化した外壁、ケバケバしいネオンサイン、そして夥しい数のスナックの看板が、その歴史、存在感を雄弁に物語っている。
まずは5Fの宴会場で腹ごしらえ。満腹状態で小休止をとっていると、隣の個室からなにやら女の気配が……。こっそり様子をうかがうと、明らかに水商売風の姐さんたちが、誘うような視線で男性客を手招いている。宴会コンパニオンではない。ビル下層にあるキャバレーのホステスたちが、団体客の存在を聞きつけ、来店を誘っているのだ。
確かに、腹が満たされれば女のコと飲みたくなるのは自然の摂理。てなわけで、そのままエレベータでB1へ直行。キャバレー「ユニバース」に足を踏み入れた。
キャバレー、もつ焼き屋がひしめくエリアに
静かに佇む味園ビル。
2Fのスナック街へは、正面左脇にある
螺旋階段から直通できる
夜のデパート 大阪・千日前
味園ビルの歩き方(前編)
5F 宴会場で腹ごしらえ
『千と千尋の神隠し』のようなエントランスが仰々しい宴会場「味園」。
ビールは大瓶290円。豚しゃぶセットは2500円で凄いボリュームだ
B1 キャバレーで大ハッスル
毎月のイベントも豊富なキャバレー「ユニバース」。同店のキャストは27歳までを
コンパニオン、28~37歳までをフロアレディ、38歳以上をホステスと棲み分けている
撮影/三原祐介
【担当記者:スギナミ】
ミラーボール、ダンスフロア、そして100人を超えるホステス。ガヤ声と昭和歌謡で喧しい店内は、東映ヤクザ映画そのままの世界観で、いつどこで組長刺殺事件が起こってもおかしくない。そんな緊張感のせいか、酒の回りも早い。デヴィ夫人風の年輩ホステス、若いコンパニオンらと愉快に飲んでいると、あっという間に閉店時間がやってくる。デヴィ夫人、今夜は指名が付かず飲み足りないのか、「上のお店に行かへん?」とのお誘い。同伴したホステス3人と2Fのスナックで1500円の焼酎ボトルを入れて深夜1時まで飲めや歌えのドンチャン騒ぎだ。
店を出て、改めて2Fを見渡すと、回廊状のフロアには個性派飲み屋の小宇宙が……。ビルには”2F スナック街”と書かれているが、それも今は昔。不況で店を畳むスナックが増え、7年ほど前から若い店主に空き店舗のテナント料を下げて貸し出しているのだ。
フェティッシュ、サブカル趣味を前面に押し出したバーが目立つ。東京でいうゴールデン街に近い形態だが、狭い通路を彩る個性的な看板を見ていると、”手作り感満載の高校の文化祭”なんて表現のほうがしっくりとくる。
店ごとに雰囲気も酒の味も違う……とあれば、やはりここは、はしご酒で攻めてみたい。店主からオススメの店を紹介してもらい、ときには意気投合した客と一緒に次の店へとなだれ込む。”飲みの物語”は芋づる式に作られるのだ。
気づけば朝8時。外光から遮断された暗いビル内は、一度足を踏み入れたが最後、ズブズブになるまで飲み続けてしまう、”時の失われた空間”なのであった。
夜のデパート 大阪・千日前
味園ビルの歩き方(後編)
2F スナックでアフター
キャバレーのアフターはそのまま2Fのスナックで。
ピッチピチの女子大生コンパニオン・マドンナちゃんと
大阪の定番カップル曲を満喫した
2F 飲み屋街で朝まではしご酒
回廊状のフロアには50軒近いお店が密集している。
この日はそれぞれ1、2杯で6軒のお店を回ったが、
平均単価800円。席料が安いため、リーズナブルに飲める
【グッドメルヘン酒場「マジョラム」】
突然の撮影に快く応じてくれたのは、店主の片野礼子さん。
可愛らしさはお店の雰囲気にもマッチしてます。
住:大阪市中央区千日前2-3-9味園ビル2F
営:21時~midnight
休:火曜日
撮影/西田 航
【担当記者:テキサス】
続いて、訪れたのは池袋駅北口にある「B-CAFE」だ。
こちらのお店もスポーツ観戦が楽しめるガールズバー。プロレス、サッカー、野球など毎日何かしらのスポーツを放送している。もちろん、W杯開催時には日本代表戦の試合をすべて放送する予定とのこと。
在籍している女のコたちは学生が中心で、スポーツ経験者も多い。なかでも、サッカーフリークなトモミちゃんは「岡田ジャパン談議なら2時間は飲める」と話し、わざわざ気を使って話題を探すテキサスの苦手な受け身キャバ嬢とはワケが違う。彼女の「岡田ジャパン談議」を聞くだけでも十分楽しめ、もし一緒に日本代表戦を見れば、かなり盛り上がれそうだ。
「期待しているのは遠藤保仁かな。彼のコロコロPKがゴールネットを揺らすところが見たいですね。でも、タイプなのはウッチー(内田篤人)。岡田ジャパンは、苦しい戦いになりそうだけど、まずは初戦突破できるよう、一緒に応援しましょう」(トモミちゃん)
同店では、旗やメガホンなど応援グッズも用意。サッカー好きの女のコと、我を忘れて日本代表を応援してみるのも悪くない。
また、サッカーを全く知らない初心者でも、彼女たちが手取り足取り教えてくれる。
岡田ジャパンが属するグループEはオランダ、カメルーン、デンマークと強豪揃いのグループ。しかし、そんな逆境のなか、もし岡田ジャパンが第一次予選突破でもしようものなら、大興奮の女のコと我を忘れて乱痴気騒ぎができるかもしれない。
そんな楽しい一夜を妄想するテキサスは、今からサッカーW杯の開幕が待ち遠しく、さして期待していなかった岡田ジャパンを応援することに決めたのだった。頑張れ、ニッポン!
【B-CAFE】
住:東京都豊島区池袋2-47-1富久信ビルB1
電:03-3988-3065
営:19:00~翌6:00
休:日曜
料:チャージ500円/10分、延長(自動延長制)500円/10分、ドリンク1杯500円~
http://www.ikb48.com/
●池袋駅北口から徒歩5分。
格闘技や野球、サッカーなどさまざまなスポーツ観戦が楽しめる。
お店でスポーツ中継する番組表はホームページから確認可能。
撮影/西田 航