俺の夜
変わらぬ味のいいちこ、唄い尽くした十八番、新人キャストとの面接のようなトーク――酒飲み人生を長く続けていると、不感症ともいうべき精神状態に陥ることがある。
そんなとき、スギナミが処方箋としているのは休肝ではなく、飲みの場を地方都市に求める“旅打ち”だ。聞けば、今年も札幌・ススキノで氷の女王が選出されたという。僕は機上の人となった。
◆今年の氷の女王は同一店舗から選出800m四方のエリアに、碁盤の目のように飲食店がひしめく札幌・ススキノは、中洲、歌舞伎町と並ぶ日本三大歓楽街。冬季は街全体が雪化粧され、夜遊び気分が否応なしに高まってくる。
街中に鳴り響く、ぼったくり警告など意に介せずといった具合に、ひっきりなしに客引きが声をかけてくるがすべてスルー。まずは旅の目的のひとつである「氷の女王」に会うため、ニュークラブへと向かう。
ススキノでは毎年「ススキノアイスワールド」という氷像の展示イベントが開催される。そのイメージガールとして、ススキノで働く数千人のクラブホステスの中から2人、「氷の女王」が選出されるという仕組みだ。
今年選ばれたのは「クラブ・シェル」に在籍する椿ここちゃんと一ノ宮亜姫ちゃん。氷の女王のモコモコッとした雪国衣装とは打って変わって、お店ではセクシーなボディコンスタイル。透き通るような白い肌に頭がクラクラする。
外の寒さを一瞬で忘れる氷の女王2人とご対面
「室蘭から札幌に出てきて7年。氷の女王は昔から憧れてたので『まさか私が!?』って今でも夢心地です。会場は寒いけど、心はほっこりしてもらえるよう、笑顔を溶かさず頑張ります」(椿ここ)「ススキノは寒いけど、酔ったあとに外に出たときの気持ちよさは格別ですよ。私もはしご酒をよくするけど、飲んでも飲んでも酔っぱらいません」(一ノ宮亜姫)
向かったのは地元民、観光客で常に盛況と噂の「原価チェーン」。すすきのG4ビルを中心に「スナック原価」「メモリアル原価」など、60分3000円程度で飲める格安の料金形態。お酒、食べ物の持ち込みも自由である。
素の道産子と触れ合える名店
「料金だけでなくて、女のコも見てください。夜に染まっていない優しいコたちばかりですよ」(「スナック原価」由華ママ)正直、女のコの質にはさほど期待はしていなかったが、その予想はいい意味で裏切られた。席にやってくる道産子たちは皆、粒揃いで性格美人。
「この値段でこの質。東京にあったら行列ができるな」などと思いつつ、しこたま飲んで顔を火照らせては、移動中に零下5℃の冷却クールダウン――を繰り返す。サウナ後の外気浴のような爽快さで、街をあとにした。
【クラブ シェル】札幌市中央区南5条西4丁目Nセンタービル5F TEL 011-520-4233
19時半~翌1時 休:日曜日
60分3000円~(指名料3000円 延長料30分3000円)
在籍キャストは20~21歳を中心に常時30人。平均予算は1万円前後みておきたい
【スナック原価】
札幌市中央区南6条西4丁目G4ビル3F TEL 011-511-3030
19時~翌1時(金・土は2時まで) 年中無休
60分2500円(延長料60分2000円)
在籍キャストは常時15人ほど。原価チェーンの情報はHPを参照 http://www.genka.jp
<撮影/小牧寿里>
有名料亭の店主が、足繁く通っている居酒屋があったとすれば、そこがうまいのは間違いないと言ってよいだろう。これとまったく同じことがスナックにあってもおかしくないのではないだろうか。
あるいは、これまで銀座の高級クラブで数千万円落としてきた企業の役員が、最終的に行き着いたスナック、と言われれば――。
今回紹介する店は、そんな「玄人」たちが集まる密教的なスナックだ。港区赤坂にある、一見なんの変哲もない店内で繰り広げられるのは、門外不出のエンターテインメント。その一部始終をご覧あれ。
◆歌舞伎町、六本木…有名ママも訪れる
このスタイルで44歳!下ネタトークは爆笑必至!
「みなさん、コ~マン(こ~んばん)は~!」いきなりの下ネタダジャレで迎え入れてくれたのは、この店のオーナー祐丘ママ。見事なスタイルで今年44歳というから驚きだ。元ストリップ嬢という異色の経歴を持つ彼女だが、こちらの予想を遥かに上回るインパクトを与えることになる。
「まずはドリンクの注文からお受けしますね!当店のメニューをご紹介します~!」
そう言って、自作のメニューを取り出した祐丘ママ。ページをめくると、一枚のイラストが。
「クイズ!このイラストからドリンクの名前を当ててみてくださーい!」
平べったい男性器のようなものが鉄板の上で焼かれているヘタうまなイラスト。はたして、これが意味するものは?「お肉が、鉄板の上で焼かれてるでしょ?なんの肉かと言えば……チンコ!お客さん、これはチンコ肉ですよ!すなわちこのドリンクの名前は…チンコニク、チンコニック、ヂントニック、ジントニック!」
こんな調子で、下ネタを組み合わせたダジャレドリンクメニューが次々と紹介される。そのリズムとスピード感に、こちらはただただ圧倒されるばかり。だが、客が受け身に徹するかと言えば、決してそんなことはない。
「おつまみも召し上がってくださいね!はい、ポテト味のスナックを召・し・上・が・れ~!」
細長いスナック菓子を3本(!)器用に鼻の穴に入れ、こちらをじっと見つめる祐丘ママ。どうやら、「やれ」ということらしい。
「このお菓子を、鼻から口に移動させて食べられるんですよ~!ほらっ!」
器用に菓子を口の中に運び、続いてワイングラスをガボッとくわえ込む。一切の無駄がない彼女の動きは、「宴会芸」と呼ぶには洗練されすぎている。
平日のみの営業だが、店内はつねに大盛況。まるで落語を見ているかのような祐丘ママのトークに、昼間は真面目な顔で大手町を歩いてるはずのサラリーマンたちも「夜の顔」を見せる。歌舞伎町や六本木の有名スナックのママたちが勉強をかねて遊びに来るというのも納得だ。
23時。フロア内のすべての客をいじり倒すエロ漫談が終わると、店内はなんとも言えない一体感が醸成される。
徹頭徹尾「くだらない」と言わざるを得ない下ネタが降りかかるこの店だが、翻って自分はこれまでいかに安易な下ネタを口にしていたか。痛感するワルヂエだった。 【ラブリーバー】港区赤坂3丁目 TEL 03-6277-7878
(営)20:00~25:00
(休)土日祝
(料)5300円 ドリンク2杯付き。3杯目から800円 時間による課金なし。
キャストは20代後半から40代までと幅広く、ママのみならずみな一芸を持っている
<撮影/長谷英史 協力/伊藤 綾>
昨年、めでたく300回を迎えた俺の夜。
その300回記念飲み会の席上で思い出の店を振り返ったのだが、話題になったのは「紹介した店のその後」だ。「どうなってんだろうなぁ~あの店」と、心配になるもなかなか行けずに足が遠のき、気がつけば閉店した店もある。
私にもそんな思い出の店がある。第四十九夜で訪れた神田のTOKYO GIRLS CAFEだ。大学生からOLまで、幅広い年齢層の素人娘が乱舞するようにテーブルについていく光景にはとにかくテンションが上がった。平日でも店内はほぼ満席で、在りし日のバブルな日本のような賑わいがなんとも気持ちよかった。
そこで今回はあの店は今……と言うわけではないが、思い出のTOKYO GIRLS CAFEを改めて訪ねてみた。
◆7年前と変わらぬギャル質と賑わい
店内は7年前のまま、ゴージャスな階段を下りると、テーブルはほぼ満席、そして控えるギャルたちがワンサといる。階段を下りて、ギャルの生け簀に飛びこむような感覚……忘れていた7年前の記憶が蘇ってきたのである。
現役女子大生3人に囲まれ年がいもなくテンションが上がる!
やって来たのはゆりあチャンにまおチャン、こはるチャンという現役女子大生3人組。なお、こちらお店はほぼ全員が素人。そのため、今回は残念ながら皆さん顔出しNG。久方ぶりに女子大生なんかと話したもんだから、気がつけばだらしなく鼻の下は伸び、四十路に片足突っ込んだおっさんのテンションは、古い言葉で恐縮だがアゲアゲである。
ほどよく打ち解け、さぁこれからというときにこはるチャンが席を立ち、別のコがつく。実はこの回転の速さもこの店の名物で、いろいろな年齢、職業のコが次々にやって来るので好みのタイプのコと出会う確率が上がるのだ。たくさんのコと話したいならフリーで飲めばいいし、気に入ったコがいれば指名をするのもいい。楽しみ方は客次第というわけである。落ち着いた20代半ばのコとしっぽりと楽しむことも……
若いネエちゃんもいいのだが、最近の私、20代半ばから後半の落ち着いたコがツボ。次に座った昼は事務員という27歳のみきチャンがドンピシャのツボで即場内指名をコール。
みきチャンを指名してからは、先ほどまでのアゲアゲなノリと打って変わり、落ち着いたトークでしっぽりと盛り上がる。昼間の仕事の話からプライベートなことまで話し、友達以上恋人未満的な雰囲気とでも言おうか。スナックでもなく、キャバクラでもないこの雰囲気は言葉で形容するのが難しい心地よさ。これでワンセット40分で3150円は安い。絶対的に安いと声を大にして言いたい。
7年前の名店は今なお名店だったことを確かめることができた。成長した卒業生に会った先生のような気持ちで、店を後にした。
【TOKYO GIRLS CAFE 神田店】東京都千代田区内神田3-14-7 3.14ビル1F
TEL 03-5256-8851
営業時間 17:20~Midnight 年中無休
3150円/100分(17:20~19:00)
3150円/40分(19:00~LAST)
指名料2100円 ※税・サ別
平日でも満席の日がある人気店
<撮影/石川真魚>