俺の夜
かつて素人女性と出会えると、一世を風靡した新宿歌舞伎町のお見合いパブ。数年ぶりに訪れると、歯の欠けた自称19歳に「1万円でどう?」とワリキリを提案され、丁重にお断りしたテキサスです。
街が変われば、そこに棲む人も変わるもの。こうした変化は何もお見合いパブだけではない。そこで、今回は大きく変わりつつある新宿の夜遊び事情を紹介していく。
まずは、今年3月に副都心線と東急東横線との相互直通運転が開始され、その恩恵を受ける新宿三丁目。東京メトロによれば、新宿三丁目駅の休日利用者数は8割増加し、活気をもたらしている。同エリアで飲食店を営む男性オーナーは、笑顔でこう話す。
新宿二丁目はゲイの街ではなくなった!?
「ここは新宿駅から多少距離があることもあり、長年、伊勢丹を目的に人が集まっていたんです。それが直通運転の開始と同時に、飲食店が立ち並ぶエリアにも人が流れ始めました。“わざわざ足を運ぶ街”から、“気軽に訪れる街”へと変わったんですよ」
この人の流れは、お隣の日本で有数の同性愛者の街、新宿二丁目にも影響を与えている。
「二丁目が同性愛者というマイノリティな人々の聖地だったのは、交通の便の悪さがいい意味で影響していたから。でも地下鉄の直通運転の影響で、人が流れ込み、急速に開けた街に変化しつつあるんです。街が活気づくのは嬉しいけど、正直、僕らの二丁目じゃなくなる悲しさはありますね」(二丁目に10年通う同性愛者の男性)
実際、男女ともに“ノンケお断り”だったバーや飲食店が、ノンケの受け入れを開始したという話は、多々聞こえてくる。また、ノンケ男性が集うガールズバーも、2店舗存在している。
【Girl’sBAR+CALL】
今年3月にオープンしたガールズバー。ノンケの男性客で賑わっている。
東京都新宿区新宿2-10-5 第六天香ビル2F
電:03-6380-4438
営:19時~翌5時
休:なし
料:チャージ料60分1200円~
http://bar-call.jp/
【Joker】
日中は学生やOLとして働く、平均年齢21歳の女のコたちが常時4~5人勤務。
東京都新宿区新宿3-8-2 クロスビル1F
電:03-5379-1234
営:20時~翌5時
休:日曜
チャージ料60分1200円~
http://g-joker.com/
JKコスプレ娘と飲みまくる!
一方、新宿歌舞伎町はどうか。6月19日に迷惑防止条例が成立。
「新宿コマ劇場の再開発に伴う企業誘致に、新宿歌舞伎町の客引きがあり、それを受けての条例成立」(事情通)という情報もあり、アジア最大の繁華街は健全化の道を歩もうとしている。
確かに、’04年の浄化作戦以降、新宿歌舞伎町の違法店は減少傾向にあるが、「いまだに“板野友美と一緒に飲める”と声をかけ、客から1セット48万円を取る」(無料案内所スタッフ)というボッタクリ被害も横行しているとか。こうしたなか、同条例の影響を歌舞伎町案内人の李小牧氏はこう話す。
「客引きは、アジアからの観光客と地方の客をカモにしている。円安の影響で外国人観光客が増えている今、こんなおいしい“狩り場”からいなくなるわけがない。ただ、この条例が抑止力となって、より安全な繁華街に生まれ変わる可能性はありますよね」
怪しい雰囲気を残しつつも、多種多様なサービスを提供する新宿の夜遊びスポット。今回の条例で衰退することなく、安全で斬新な街に変化してほしいものだ。
【李 小牧氏】
’60年8月27日、中国湖南省生まれ。’88年に来日して以来、歌舞伎町に魅了され、歌舞伎町案内人として長年、同エリアで活躍。著書に『歌舞伎町案内人』(角川書店)
【アフタースクール】
今年6月にオープンしたばかりのコスプレキャバクラ。女のコはみな女子高生の制服姿で接客。
東京都新宿区歌舞伎町1-9-6 三経32ビル2F
電:03-6457-3460
営:20時~ラスト
休:なし
料:60分6000円
http://www.aftersc.com/
かれこれ十数年前、なけなしのカネを握りしめて行った後楽園。酔客で溢れる屋外に燦然と浮かぶリングがあった。オヤジたちや若者の怒声が響くなか、汗を滴らせ、身体をぶつけあう女子プロレスラー。ブレンバスター、ジャンピングニーパット、ジャイアントスイング。派手な技の応酬に、「ギャァァ」「オラァ」「アァァ」、闇夜に響く甲高くせつない声。「戦うビアガーデン」と銘打たれたその店で、妙な興奮を覚えつつ飲んだビールの味が忘れられない。
たしか新橋の駅前ビルの屋上にあった「ローション相撲」を目玉にしたビアガーデン。金髪のお姉さんが水着でくんずほぐれつする姿に田舎っぺは都会を知った。
お気に入りだった九段会館。靖国神社と武道館を眺めつつ飲んだ生ビール。早い時間はびっくりするほど客がいなくて、ロケーション的に似つかわしくないバニーガールが、粛々とソーセージ盛りを運ぶのを食い入るように見ていた。
俺にとってのビアガーデンは「祝祭空間」だ。開放感と相まった怪しさとある種のいかがわしさ……非日常感のなか飲むビールは格別なのだ。しかし、時代(とき)の流れか、「祝祭空間」は次々と過去のものとなってしまった……。
六本木のど真ん中で夜景と生ビールを
そんななか、今、東京で一番「非日常感」がある街、六本木に突如として現れるビアガーデンがある。
良きにつけ、悪しきにつけ、注目が集まる六本木のランドマーク・ロアビル。その混沌具合に「ギロッポンの九龍城」と呼ばれるビルの一角に「非日常」があるのだ。
なにかと話題の人気クラブへと繋がるエレベーターには「生ビール」の立て看板が。5階で降りると、店に繋がる通路にみっしりと貼られた葦簾と立て看板が海の家を彷彿とさせる。くねくねと曲がった複雑な通路を行くと、外のスペースに繋がる階段が。このダンジョン感が六本木の魅力だろう。
外に出て、階段を下りると突如現れるオープンスペース。屋上ではないものの、ここからの見晴らしは抜群。パッと開いた視界の目の前には、そそり立つ六本木ヒルズ。天空からは青くクールな光が降りてきて、摩天楼は我が世を謳歌しているよう。右を見れば、オレンジ色に輝く東京タワー。ヒルズとは違って、たおやかで優しい光は懐かしくかつ女性的で、おもわずため息が出る……。
東京タワーに釘付けになっていると、「いらっしゃいませ~」と元気な声。両手にジョッキを握り、水着で闊歩する女のコが。「絶景とはこっちの眺めを言うんですよ!」とさっそく鼻の下を伸ばすO氏。女のコも景色も同時に愛でることのできる特等席をゲットする。