俺の夜
「再オープンからもう1年たつんだネ……信じられないよネ」
石巻市で最大の規模を誇るフィリピンパブ「スナックBM」など4軒を経営するエリママは感慨深げに振り返った。スナックやパブなど大小約300軒が軒を連ねていた市中心部の繁華街・立町は、旧北上川から逆流した津波に襲われ、2m近く冠水した。1年たった今では立町は櫛の歯が抜けたようになり、繁華街の店の半数以上が廃業・休業に追い込まれている。
エリママが店を再開させたのは震災から20日後の’11年4月1日。電気は投光器、水は従業員の家族の家などから汲んできた。そこにあるのは「誰かが始めなければ」という強い思いだった。実はエリママ、日本人の夫との間にもうけたひとり娘と孫娘、そして娘婿を津波で失い、店の従業員のフィリピン人女性2人も亡くなっていた。
「家族の安否はわからないし、本当に最悪だった。でも、とにかく店を開ければいろんな人が来て、娘の手がかりも摑めると思ったの」
ジャージにタオル鉢巻き、そんな姿でソファに積もった泥を掻き出し、避難所暮らしだった女のコ、従業員総出で内装の修繕をした。完全に「見切り発車」。でも――。
「店を開けたらお客さんが入れないほど、どっと来ました。お酒は出せなかったけど、とにかく話がしたかったんでしょう。皆『無事だったー!』と言い抱き合って、泣いて、笑って。その“人のパワー”に何度勇気づけられたか」
現在ここで働く女のコは30人ほど。震災を機に帰国するコはほとんどおらず、元気に働いている。
「週末はおかげさまで大盛況ネ」
この日は土曜日、21時を過ぎると、エリママの言うとおり、次から次へとお客さんが入ってきた。我々のテーブルに着いてくれたのはカティちゃん(26歳)。ママからこっそり習ったタガログ語で「マガンダ!(=美人)」と話しかけると照れる姿が実にカワイイ彼女は来日6年。歌とダンスが大好きで、店ではショータイムのダンスリーダーを務めている。
「早く出勤して女のコに振り付けするのが大変。踊りがズレてると年上のお姉さんにも怒るのヨ」と舌を出す。
「震災があってお客さんが優しくなったネ。地震は本当に怖かったけど、今も石巻が大好きだよ」
とけなげに語る姿に、水割りが塩味を帯びてしまう。カラオケが終わり、BGMがアップテンポなものに変わった。流暢な英語がショータイムの開始を告げる。カティちゃんを中心に女のコが次々ステージに上がると、流れてきたのは少女時代の「ミスタータクシー」。フィリピンパブで韓流には驚いたが、年上と思しきお姉さん方もキレのあるダンスで盛り上げる。お次は2人組のヒップホップダンス。一旦席に戻ってきたカティちゃんが「あの2人30歳すぎてるのにスゴいよね~」と悪戯っぽく笑う。最後はカティちゃんがセクシーな衣装で登場。流暢な日本語で歌うのは「キューティーハニー」。その可愛さにお客さんからはおひねりが飛び交う事態に。
「この店が大好きだった(亡くなった)娘に『ママ、辞めたらダメだよ』って言われてる気がするの。だから頑張るワ」。最後に聞いたママの言葉が胸に沁みた……。
【スナックBM】
宮城県石巻市立町2-4-12
電:0225-23-6021
営:20時~翌3時
料:ワンセット3000円~(90分)
●石巻市で一番大きな箱だ
春は出会いと始まりの季節――とはいえ30代半ばの身としては少々重たくも感じるこの言葉。それは夜遊びのスタイルにおいても同様で、新人キャストの“心の性感帯”を探る楽しさより、古馴染みのオールドミスと傷を舐め合うような失恋トークを重ねたほうが、心休まる今日この頃だ。
「人生最後のモテ期、俺の黄昏流星群はいつ見つかるのか……」
阿佐ヶ谷の安スナックでそうボヤくスギナミを見て、夜遊び仲間のI氏は「たまには若いコと交流しないと心も体も老成化する一方」と窘めるのであった。
スレた夜の女よりもキラキラとした素人女子。それも未来への夢と希望に溢れた女子大生に若いエキスを分けてもらいたい。生娘の生き血を求める吸血鬼のように、夜の新境地を目指すのであった。
女子大生と触れ合い思春期の記憶が蘇る
青春回顧をテーマに訪れたのは銀座のキャンパスカフェ「BADD GIRLS 銀座店」。働くキャストは現役の女子学生のみ。指名、同伴といったキャバクラ的要素はなく、自然体の接客、トークが楽しめるお店だ。私服姿の女のコで賑やかな店内に入ると、文字通り大学のキャンパスに迷い込んだような錯覚を覚える。
「いらっしゃいませ~」
明るい笑顔と嬌声を振りまきながら席についたのは、えくぼがチャーミングな斉藤ゆきなちゃん(20歳)とセクシー担当の浜崎優ちゃん(20歳)。ともに今年4月から3年生という花の女子大生だ。「え~? 34歳なんて枯れる年じゃないですよ。だって、同年代の男のコより頼れるし教えてくれることいっぱいあるし。私よりキラキラしてますよ」(優)
「そうそう。同い年のコができないオトナの遊びやデートをしてみたいんですって」(ゆきな)
オトナの遊び? ほうほう、それでは……と、やおら空揚げを口にしてポッキーゲームをせがむスギナミに対し、「そういうのはダ~メ」とペチッとグーパンチで応酬のゆきなちゃん。「じゃあ私のほうからお返しに……安室奈美恵ゲーム、イェ~イ」と、「嚙まずに『アムロナミエ』を複数回言えないと罰ゲーム」の展開に。
コレだよ、コレッ! 脳裏に蘇る思春期の記憶と若草の香り。婚活中のアラサー女子とじゃ味わえない女子大生との楽しいひととき。
すっかり若さを注入され、笑顔もツヤツヤになったところで、お店をあとにすることにした。
「BADD GIRLS 銀座店」
東京都中央区銀座6-3-12 数寄屋ビルB2
電:03-3574-2030
休:日祝
営:16時半~ラスト
料:4410円(16時半~20時/70分)、1万710円(20時~ラスト/70分)
赤坂、六本木にも系列店アリ。「BADD GIRLS」に在籍する女のコたちをモデルにしたパズルゲーム「いまどき女子大生パネル」はANDROIDアプリで好評配信中。リアルな生写真、プロフィールを楽しめる