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19歳で起業したベンチャーが報道の仕組みを変えたワケ

 あるベンチャーの試みが日本の報道のあり方を根底から覆そうとしている。「記者のいない通信社」と呼ばれるJX通信社。名前を知らずとも、多くの人がその活躍ぶりを目の当たりにしているはずだ。事件、事故、災害の情報をいち早く察知し、報道機関に流しているからだ。 米重克洋 同時に、数多くのメディアと合同で選挙の情勢調査も実施。テクノロジーを駆使して「報道の機械化」に取り組む企業なのだ。その代表を務める米重克洋氏は現在33歳。19歳で起業した超早熟の経営者だ。一体、どうやって学生ベンチャーが報道の仕組みと現場を変えたのか……? 米重氏の半生とともに追った。

衆院選は最も大規模な調査に

――衆院選が迫っています。メディアと合同で世論調査を行うJX通信社も忙しくなりそうですね。 米重:すでに全国各地の報道機関から相談をいただいています。特に今年は4年ぶりの総選挙ですが、それ以前から全国各地の首長選挙で報道各社との合同調査が増えていたので、これまでで最も大規模に調査することになりそうです。選挙報道をデータジャーナリズムの観点からわかりやすく伝えるプロジェクトも、ある報道機関と進めています。 ――先日の横浜市長選では菅首相の側近だった小此木八郎・前国家公安委員長が大差で敗れました。選挙期間中に目まぐるしく情勢が変わったあの選挙も調査をされた? 米重:報道機関の調査を受託するかたちで行いましたが、野党推薦の山中竹春さんの圧勝だけでなく、2位以下の順位も調査結果どおりでした。 ――なぜ、そんなに正確なのか? 米重:調査内容はこれまで報道各社がやってきたことと大きく変わりませんが、当社はオートコール(自動発信)の仕組みで調査を完全に機械化しています。電話口で流す音声の速度やトーンなどを改良し続けて、人が電話をしたときと同様の偏りの少ない調査を実現しました。これによって情勢調査にかかるコストは10分の1程度に引き下げられたと言われています。 低コストなので、定期的な調査が実施しやすく、その結果、正確な結果を予想できるようになったとみています。実際、昨年の大阪都構想をめぐる住民投票は1%ちょっとの僅差で否決されましたが、朝日放送と行った合同調査の結果との誤差もわずかでした。

中学生時代から抱く航空会社設立の野望

――選挙の情勢調査が、ちゃんとビジネスになるんですね。 米重:ただ、当社のビジネスとしてはまだ新しいもの。軸になっているのは、SNSなどの情報から事件・事故の兆候をいち早く察知する「FASTALERT」という報道機関向けのサービスと、速報性を重視した配信アプリの「NewsDigest」です。なかでも前者はNHKと民放の全キー局、地方局と地方紙の大半で利用してもらっています。 ――メディアを陰で支える会社。よくそんなことを考えましたね……? 米重:最初は、航空会社をつくりたかったんですけどね。 ――スケールが大きすぎる……。聞くところによると、中学生時代から相当な航空オタクだったようですね。 米重:今でもそうですけど(笑)。同級生がものすごい航空オタクで、それに影響されて中学時代から航空業界誌の『月刊エアライン』を愛読するようになりました。航空会社をつくろうと思ったきっかけは、ある新聞のインタビューで当時のJALの社長が「日本にLCCは馴染まない」と発言していたこと。 私は「本当か?」と疑問を持った。海外ではすでにLCCが普及していましたからね。日本の航空会社は規制に守られて高い運賃を設定しながら、その利益を利用者に還元する姿勢が足りないとも感じた。それで、いつか自分で航空会社をつくって参入し、業界を変えていきたいと思ったんです。
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JX通信社は一つのステップ
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週刊SPA!9/14号(9/7発売)

表紙の人/宇垣美里

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