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アフガンはなぜ戦場なのか?戦場カメラマン・渡部陽一氏に聞く

米軍撤退で、再びアフガンはタリバンの手に――。人権弾圧、イスラム国による自爆テロ、そして、空白を埋めるように近づく中国。大国の覇権争いに巻き込まれるアフガンの行方は?

混迷を深めるアフガン。米中新冷戦に突入へ

アフガン

カブールの空港周辺で警戒に当たるタリバン兵ら 写真/AFP時事

「永遠の戦争を終わらせる」。8月31日、バイデン大統領は、20年にわたるアフガニスタン戦争の終結を宣言。空路による総勢12万人の脱出劇を自画自賛してみたものの、米国史上最長の戦いで、2兆ドル以上の戦費、そして約16万人の軍民関係者の命が水泡に帰した。  米国の戦争は終わったが、イスラム原理主義組織タリバンが政権を掌握したアフガンがさらなる混迷に陥るのは必至の状況だ。駐留米軍に従軍し、幾度となく現地を取材してきた戦場カメラマンの渡部陽一氏が話す。 「タリバン政権のガバナンスはうまく機能しないでしょう。現時点でタリバンは国内に取り残されている外国人や渡航許可を得た自国民の安全な出国を約束しているが、肝心の国際空港を運用するノウハウさえない。 『イスラム法の範囲内』で女性の権利など、人権を保障すると言ってはいるが、彼らの言う『イスラム法』は、パシュトゥン・ワーリ(人口の45%を占めるパシュトゥン人の部族的な掟)にアルカイダの過激思想が加わったものと見るべき。  実際、首都カブールには宗教警察が現れ、風紀が乱れているとして市民に鞭を振るい、国民的人気歌手やコメディアンがすでに処刑された」

「帝国の墓場」とも呼ばれるように

 混乱は当分収まりそうもないが、アフガンに苦杯をなめさせられたのは米国だけではない。近現代では英国、ソ連も侵攻したが敗れ、アフガンは「帝国の墓場」とも呼ばれるようになった。 「ほかの中東諸国のように石油は採れず、主な産業は農業や牧畜業くらいしかない貧しい国だが、ユーラシア大陸の真ん中、『文明の十字路』と呼ばれる地政学上の要衝のため、大国から何度も攻め入られてきました。  ただ、国土の4分の3は険しい山岳地帯で雨は降らず、冬は厳しい。長期の対ゲリラ戦を強いられ、仮に征服できても、各地域を部族が率いているので、近代的な価値観や民主主義では治められない。米国の敗戦は当初から明らかでした」  だが、米国が去った空白に懲りずにまた新たな大国の影が近づく。現代版シルクロードである「一帯一路」構想を推し進める中国だ。
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8.15カブール陥落は中国のメッセージか?
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