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「今日のご飯がない」困窮者を支援するフードバンク。枯渇する食料の確保に奔走

 生活困窮者、高齢者、障害者の生活サポート相談を年間2500件も行う神奈川県座間市のNPO法人「ワンエイド」。12月6日公開の記事でも、コロナ禍でフードバンクの利用者が3倍に増えたことに触れたが、実は肝心の食料が“枯渇”する自体に陥ったのだ。代表の松本氏のインタビューをお届けする。

企業などから預かった食料。賞味期限を確認し、月別に分けて保存する

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コロナ禍でフードバンク利用者が3倍に。ついに食料が枯渇しかける

「ワンエイド」の食料支援は、日本に初めてフードバンクを根付かせた米国発の『セカンドハーベスト・ジャパン』から品を分けてもらう形で始まった。ハーベスト・ジャパンや後に設立した神奈川フードバンクは備蓄食料を困窮者に直接渡さずに、「ワンエイド」のような小さなNPO法人や団体に仕分ける形で届けていた。  しかし、ホームレスや貧困家庭に常に向き合う松本氏は、「今日のご飯がない」人への支援として、たまに届く食料だけではサポートが足りないと考えていた。さらに松本氏に追い打ちをかけたのが、近年頻発する災害だった。 「地震や豪雨で各地に災害が起きると、大口の食料は全部被災地に送られてしまうんです。でもワンエイドに来られる方は、被災と関係なく困窮で来られている。入ってくる食料がなければ、それこそ生死に直結しますよね。『それでは困る』と思い、直接企業をめぐって支援をお願いすることにしました」(松本氏)

料理のできない男性や高齢者にありがたがられるカップ麺

フードバンク利用者がコロナ前の3倍に

 現在の「ワンエイド」は、市民団体やNPO法人の他に、ダイエー、コストコ、オイシックス、らでぃっしゅぼーや、イオンリテール、マルイファミリーといった名だたる企業と契約を結んでいる。しかしいつも潤沢にある食料が、コロナ禍で突如枯渇する危機に見舞われた。派遣切りなどに遭った方、困窮状態に陥った家族が一気に増え、フードバンク利用者がコロナ前の3倍に増えたからだ。 「企業の皆さんからお預かりした食料は、賞味期限を見て月別に分けているのですが、昨年5月の段階で7月・8月の備蓄食料がなくなりかけていたんですよ」(松本氏)  その状況を見た馴染みのケースワーカーが「大変だ! あの『ワンエイド』から食料が消えた」と、血相を変えて座間市役所に連絡をしたという。「そこからが速かった」と松本氏は話す。市役所担当者から社会福祉協議会へ連絡が入ると、社協担当者がすぐに各企業に呼びかけた。そこで社会福祉協議会、青年会議所、商工会議所のメンバーは、松本氏らが参加できない時でも、ドン・キホーテ、イオン、神奈川県内に展開するスーパーのTAIGAや、公園などで場所を借りてフードバンクを行ってくれたのだという。 「今までは私達だけがフードバンクの品を集めている状態でした。でも地域での活動に共感してくださった方たちが増えて、お渡しする食料を集めてくださるようになったんです。昨年のコロナ禍は無我夢中でしたけど、自分達だけで集めなくても済む状況になったことはすごく嬉しかったですね」(松本氏)  また座間市の土地柄、厚木基地からの提供もあった。 「近隣に基地がある街なので、厚木基地内の教会やアメリカンスクールのお母さん方が集めてくださった食べ物を、アーミーの方達が持ってきてくださるんですね。コロナ禍では地域に特化した集め方もだいぶ形になって、フードバンクが活性化してきましたね」(松本氏)

英語で書かれた手前の缶詰は、おそらく厚木基地から提供されたもの

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コロナ禍の休校で、座間市内の全小学校から支援があったものとは
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