間近に迫る夏。すでに猛暑が予測されているが、そのリスクは想像をはるかに越えていた。酷暑は体にもダメージを与え、最悪死に至るケースもあるという。夏場こそ気をつけるべき病気を専門の医師に聞いた。
脱水によるドロドロ血液で血管が詰まり死に至る恐怖
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6月から電気代が上がり、家計への負担は増すばかり。一方、気象庁によれば6~8月は観測史上最も暑かった’23年に匹敵する猛暑が予測され、その暑さによってさまざまな病気のリスクが高まる恐れがある。
総合内科専門医・秋津壽男氏
「夏場、特に気をつけるべきは水分不足による脱水です」と注意喚起するのは、総合内科専門医の秋津壽男氏だ。
「脱水が起きると血液の水分量が減り血液の粘度が高まる『脱水濃縮』という状態になりやすい。そうなると血液がドロドロになり、血管を詰まらせる原因のひとつになり得ます。結果、心臓なら心筋梗塞、脳なら脳梗塞、肺なら肺塞栓症といった死のリスクも高い病気の発症へと繋がるのです。これらは冬の病気というイメージがありますが、夏場こそ要注意です」
循環器専門医・幡 芳樹氏
循環器専門医の幡芳樹氏も「酷暑による環境ストレスは動脈硬化による血管の事故を加速させる」と、血管への負担を危惧する。
「動脈硬化を進行させる主なものとして肥満を含めた生活習慣病がありますが、暑さや急激な温度変化による環境ストレスもボディブローのように体にダメージを与えます。すると、血管への負担が重なり動脈硬化による心筋梗塞や致死性の不整脈を引き起こす危険性が高くなります」
特に、基礎疾患がある人は要注意だ。
持病持ちこそ水分コントロールに気をつけたい
循環器専門医・黒岩信行氏
同じく循環器内科専門医・総合内科専門医の黒岩信行氏は「心不全患者にとって夏は鬼門」と言う。
「心不全治療では、利尿薬を使って体内の余分な水分を排出する必要があります。しかし、夏場は水分補給が必要不可欠。水を飲めば心不全リスクが高まり、飲まなければ脱水による病気に繋がります。春先まで元気だった患者さんが夏場にお亡くなりになるケースもあるので、心臓の持病がある方は特に水分コントロールに気をつけましょう」
さらに糖尿病を患っている人も夏場は特に注意が必要である。
「糖尿病治療では最近、尿から糖を出す利尿薬が用いられます。一方で、極度の脱水になり、糖尿病昏睡と同様のことになるリスクも高まる」(黒岩氏)
最悪、死へと至る夏の猛暑。なるべく体に負担をかけないよう、しっかりとした対策が求められる。
「持病がある人を除いて、水分補給はしっかりと行うこと。飲み物は運動量の少ない人は水や麦茶で十分ですし、運動後にはポカリスエットなどのスポーツドリンクもオススメです。下痢で脱水しがちな人はオーエスワンなど電解質の濃い水分を摂りましょう。6月の今のうちから、散歩など外出して暑さに慣れる習慣を」(秋津氏)