吉村智樹が明かす、稼げるWebライターになる秘訣[企画書のコツから営業、取材現場での実践テクまで公開]
いま、変化の時を迎えているWebライターの世界。ChatGPTやClaude3などのAIツールの登場により、今後はSEO対策(検索エンジン最適化)に特化した“SEOライター”の仕事は激減していくとも言われている。
そんななか、「稼げるらしい」と注目を浴びているのが、“取材ライター”や“インタビューライター”だ。単にネットで得た情報を書き起こすのではなく、現場に足を運び、目の前で見聞きしたことを記事にする。非常に難しい仕事に思えるが、スキルさえ身につければ稼げるライターになるのも夢ではない。
現在、取材ライターとして活躍する吉村智樹さん(58歳)は、『週刊大衆』(双葉社)、『CREA WEB』(文藝春秋)、『SUUMOジャーナル』(リクルート)など、さまざまなWebメディアや雑誌で執筆している。51歳で未経験からスタートし、今や収入は4倍に。仕事のほぼすべてを、“企画の売り込み”で取っている。
【前回記事】⇒51歳で出合ったライターという“天職”。50代の新人が“前職のスキル”を活かして売れっ子になるまで
今回は、取材ライターの生命線ともいえる企画の立て方から、街ネタなどの取材やインタビューの具体的なテクニックはもちろん、応用編とも呼べる内容をもりだくさんでお届けする!(記事は全2回の2回目)
フリーランスで取材ライターを目指す場合、出版社やメディア運営をしている企業のライター募集に応募するのが一般的だ。採用のポイントとなるのが“企画力”。経験や実績がなくとも、提示できるネタ次第でチャンスを掴める。企画が重視される背景には、昨今のメディアの運営事情が関係している。
「取材ライターって、メディア側から『取材してきてください』と依頼されることは少ないんですよ。Webメディアは記事数を確保しなければならないけど、編集者がすべての企画を考えるのかと言うと、そうではない。ネタの持ち込みを待っている状態なんです」
実際に筆者(倉本菜生)もフリーランスの取材ライターだが、仕事の7~8割は企画を売り込むことで成り立っている。編集者との付き合いが密であれば、「これを取材してきてほしい」「こういうテーマで具体的な案を考えてほしい」と仕事を振ってもらえることもある。だが、仕事を頼まれるようになるには、企画を出しまくって実績を作り、編集者との信頼関係を築かなければならない。
吉村さんも「取材ライターになれるかなれないかは、企画を持っていけるかいけないかの差でしかない」と語る。
「そもそもメディア側に“取材ライターを探す”という発想がなくなってきているんです。この1年でWebメディアの世界は若返り、20代の編集者が増えてきました。彼らはライターが企画を持ってきてくれるのを待っているけど、みずから積極的に動いてネタやライターを探していないように僕は感じています。だからこそ、企画を持ち込むと喜ばれる。取材ライターになりたいなら、媒体に売り込める“取材対象”をたくさん持つことがいちばん大事ですね」
今年に入ってからは、週3のペースでWebメディアに新規営業をしているという吉村さん。SNSなどでライター募集をしているのを見つけたら、企画書を添えてメールを送っているそうだ。
単純に考えて、営業用だけでも月に最低12本は新規企画を作っているわけだが、どうやってネタを考えているのだろうか。
「企画と言っても難しく考える必要はありません。シンプルな発想から生まれてくるものだと思います。僕はいま、Yahoo!ニュースで『京都の人と街』という連載をやっていますが、この企画は“街の違和感”から生まれました」
吉村さんの連載では、「コインランドリーが併設されているカフェ」や「製材所を再利用したカフェ」など、斬新な取り組みをしている店や人が取り上げられている。それらは街歩きをしているときに見つけたそうだ。
「なんでカフェの中にコインランドリーがあるんだろう。この店はどうなっているの? と気になったんです。製材所カフェも同じような疑問からでした。駅前にぽつんとある小さな店なんですが、裏側がボロボロの製材所なんですよ。えらいところで営業してんな、どうなってんの? と思って。そうやって疑問に思ったモノを写真に撮り、感じたことをメモしておくんです。気になった場所にもう1回行ってみたり、軽く調べたりしていると、企画が浮かび上がっていきます」
福岡県出身。フリーライター。龍谷大学大学院修了。キャバ嬢・ホステスとして11年勤務。コスプレやポールダンスなど、サブカル・アングラ文化にも精通。X(旧Twitter):@0ElectricSheep0、Instagram:@0ElectricSheep0
Contents
- 1 ①取材ライターの勝機は「企画を持ち込む」にアリ
- 2 ②企画を考える時のポイントは?
- 3 ③“採用される企画”に仕上げるコツは?
- 4 ④メディアの編集者(担当者)に読んでもらえる企画書の書き方は?
- 5 ⑤企画の売り込み先はどうやって決める?
- 6 ⑥“事前準備”はどこまで行うべき?
- 7 ⑦インタビューのコツは?
- 8 ⑧「ここだけの話」にはどう対応する?/取材相手をリラックスさせたほうがいい?
- 9 ⑨ライターはカメラにもこだわるべき?
- 10 ⑩ライターにおすすめのSNSは?
- 11 ⑪良い記事を書くとフォロワーが増える?
- 12 ⑫単価の高い仕事を取るには?
- 13 ⑬“稼ぐため”の取材ライターの生活リズム
- 14 ⑭東京の有名出版社との取引は“ライターの仕事の一部”に過ぎない
- 15 ⑮地方のライターが稼ぐには?
- 16 ⑯ライターとして長く続けていくために気を付けていることは?