昨今、注目が集まる50代転職。その活況から、ただ会社にしがみついていただけのスキルゼロ、コネゼロの負け組社員が参戦し、屍の山を築いている。しかし、この大多数の50代くすぶり社員でも転職を成功させ、年収増を狙える秘策が。その極意を探る。
50代の採用を積極的に行っているが…
ミドルの転職市場が活況といわれるが、採用のプロはどこを見ているのか? 現職の人事担当者に集まってもらい、企業側の本音を語ってもらった。
<参加者>
・中堅アパレル企業社長の佐藤辰信氏(仮名・46歳)。全国に店舗を展開する老舗アパレル企業の2代目社長。社内改革にも前向きで新卒採用、中途採用を積極的に行っている
・大手メーカー人事の横澤憲司氏(仮名・56歳)。大手銀行や精密機械企業を経て現在、大手メーカーで採用責任者として活動。ここ数年、50代採用を増加
・人事コンサルタントの吉村勝洋氏(仮名・42歳)。地方の食品メーカーで長年人事を担当。現在は独立して人事コンサルとして地方の中小企業の採用支援を行う。自社でも50代を雇う
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横澤 私が働くメーカーでは今、積極的に50代採用を行っています。事業拡大のなかで海外展開を見据えたプロジェクトを行うとなると、自然と専門性が高くなる。そこで経験豊富な50代の方を採用し、活躍してもらっています。ただ、定着するかどうかは人によりますね。
佐藤 私の会社でも数年前に50代の経理を雇ったのですが……。スキルは非常に高いものの、正直組織に馴染めているとは言い難い。承認欲求が強く、前任者のやり方すべてに対して否定から入るので周囲からすれば鼻つまみ者。プライドからくる「成果を出さないと」という意識が強いんです。
中堅アパレル企業社長の佐藤辰信氏(仮名・46歳)
70歳定年時代、50代はまだまだ貢献してくれる
吉村 承認欲求は若者以上に過剰かもしれませんね。でも、地方の中小企業はそもそも人材不足なので、50代のIターン、Uターン採用が近年増えている。ただ会社が違えば業務内容も変わるので経験を過信するのも良くない。70歳定年といわれている今、企業側にはむしろ全員未経験だと思って採用すべきだとアドバイスするんです。たとえ未経験の50代でも70歳まで約20年働いてくれると考えたら、20代を採用して3年で辞められるよりもはるかにいい。
佐藤 難のある50代人材は目的よりも手段にこだわるイメージがありますね。テンプレを重視して、エクセルのフォーマットに執着する感じ。合理的に物事を整理して考えるのが苦手な印象があります。
吉村 デフレ下のここ20年は「いかにコストを下げて値段やサービスを安く提供するか」という明確な解があった。ゴールは決まっていたからそこまでの道筋だけ考えていればよかったんです。それが「言われたことはやるけれど、自分で課題を見つけて解決するのは苦手」という部分にかかってくるのかもしれません。
大手メーカー人事の横澤憲司氏(仮名・56歳)
横澤 あと、50代はキャリアビジョンが漠然としている方が多いですね。「今後の10年間で何をしたいですか?」と聞くと答えに窮する。一方で、過去の経験から「何がダメか」は指摘できます。ずっと会社に尽くしてきて「自分のやりたいこと」という視点で考えた経験がないのでしょう。
吉村 人の話を聞かない人も多いような。経験則による絶対の自信が自分の中にあるんでしょうが、「相手が何に困っているか」を理解できないと仕事をする上では難しい。年下の世代とも信頼関係をつくって「一緒にやろう」と言えるのが大事です。
転職回数が少ない=使えない人材?
人事コンサルタントの吉村勝洋氏(仮名・42歳)