「投票しにいく暇があるなら、バイトのシフトを入れますよ」選挙に“行けない”氷河期世代のリアル。週7で働いても月の稼ぎは20万円
「就職氷河期世代」は、全国におよそ2000万人——。社会の中核を担うべき世代の投票率は、いまだに低い。彼らの「行きたくても、行けない」現実がある。そんな“沈黙世代”のリアルに迫った!
「投票しにいく暇があるなら、バイトのシフトを入れますよ」
梅雨入り前の曇天の下、軽トラックの荷台から飲料ケースを降ろす佐藤健二さん(仮名・45歳)。現在の稼ぎは日雇いや週契約の現場仕事で月20万円ほど。
「2浪して入った4年制大学を卒業後、何とか製造業の人事に就職。でも、朝8時に出社し、帰宅は深夜1時過ぎ。休日も週に1回あるかどうかで、残業は月300時間超え。自分の下には誰も入ってこない、明らかな超ブラックも、仕事は辞められない……。このまま人生終わるのかと当時は絶望的な気分でした」
時折精神科に通いながらも激務に耐えたが、10年前に辞表を出して以来、定職には就いていない。
「まあ、自分一人食っていく分には困ってないんで不満はないです。自由ですしね」
そう口にしながら表情はどこか硬い。社会保険や年金の未納期間、将来の生活設計に話を向けると、「考えてない」と短く答えた。そんな彼に、今夏の参議院選挙について尋ねると、「行けない」と即答した。
「テレビも新聞も見ないですし、投票にも20年くらい行ってませんね」
理由は選挙が生活の優先順位にないからだという。
「投票に行けば一日潰れる。収入が減るし、そもそも、各政党や候補の公約を精査する時間もない」
そんな彼にも、政治に関心を持つ瞬間はあったという。
「橋本さんの消費税、小泉さんの郵政改革、安倍さんの“美しい国”とか……ああいうのは面白かった。維新もそう。ストーリーがあってスカッとするし、頭使わなくていいから」
そう語ったあと、ふと自分に言い聞かせるように続けた。
週7で働いても月20万円。選挙に行く余裕はない!
![[選挙に行けない]氷河期世代の肖像](/wp-content/uploads/2025/07/250704p01-550x386.jpg)
家ではなるべく寝ていたいという佐藤さん。「シフトは週7日入れています。一日でも休むと不安なので」と話す