更新日:2025年10月28日 18:10
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勾留中のがん患者を見殺しに…元裁判官が語る、大川原化工機冤罪事件の闇「命より大事な正義感の暴走」

 でっち上げの不正輸出容疑で逮捕者を出した大川原化工機を巡る冤罪事件では、当時71歳の同社相談役の男性が、勾留中にがんを発症したにもかかわらず適切な治療を受けられないまま死亡。8月25日に、警視庁と検察の幹部が共に遺族に謝罪した。 “白ブリーフ判事”こと元裁判官の岡口基一氏は「大川原化工機冤罪事件裁判の保釈請求却下」について独自の見解を述べる(以下、岡口氏の寄稿)。 【大川原化工機冤罪事件裁判の前回記事を読む】⇒「「もはや手術すらできない状態」大川原化工機事件、無実の71歳を死に追いやった司法の非情すぎる判断」はこちらへ
その判決に異議あり!岡口基一

写真/時事通信社

裁判所だけ冤罪決定後も無反省。命より大事な正義感の暴走

大川原化工機事件では、勾留中にがんを発症した被告人が適切な治療を受けられず死亡している。この悲劇でもっとも責められるべきは、被告人の病状悪化を知りながら適切な処置を怠った東京拘置所と、最後まで保釈を認めなかった裁判官たちだ。 死亡した相嶋静夫さん(享年72歳)は親族がたまたま医療機関に勤務していた関係で勾留執行停止中の治療が実現したが、すでに手遅れの状態であった。移送された際、東京拘置所医務部病院の五十嵐雅哉医師から親族の働く病院の医師宛てに診療情報提供書が送られたが、そこには「受診が遅れましたことをお詫びいたします」との記載があったという。だが、お詫びするのは相嶋さんに対してではなかったか。 後に東京拘置所の診療録は遺族らに公開されている。だが、肝心な部分はすべて黒塗り。都合の悪い部分を隠蔽したかったのだろう。 相嶋さんの保釈を頑として認めなかった東京地裁令状部の裁判官たち。保釈を拒んだ最大の理由は、相嶋さんが罪を認めず否認を貫いていたことにある。裁判官は否認する被告人の保釈を認めたがらないのだ。 有罪率99.9%の日本の刑事裁判において、否認している被告人は「真犯人でありながら罪を免れようとする、とんでもない不届き者」と裁判官の目には映る。こんな不届き者の保釈を認めたら重要な証拠がすべて隠滅されるかもしれない。そのような最悪の事態は絶対に阻止しなければならない。裁判官は強い正義感からそう考える。

おかぐち・きいち◎元裁判官 1966年生まれ、東大法学部卒。1991年に司法試験合格。大阪・東京・仙台高裁などで判事を務める。旧Twitterを通じて実名で情報発信を続けていたが、「これからも、エ ロ エ ロ ツイートがんばるね」といった発言や上半身裸に白ブリーフ一丁の自身の画像を投稿し物議を醸す。その後、あるツイートを巡って弾劾裁判にかけられ、制度開始以来8人目の罷免となった。著書『要件事実マニュアル』は法曹界のロングセラー