ソーシャルゲームへの課金中毒が話題になって久しいが、見渡せば婚活、美容整形、ダイエット、中学受験……あらゆる課金沼が口を開けて待っている。もはや社会問題化しつつあるこの底なしのシステムに、なぜ人々はハマり、抜け出せなくなるのか? 彼らの切実な胸の内に迫った。
中学2年生で初めての整形を体験
術後経過で顔が腫れた佐渡優菜さん(仮名・24歳)。「ちょうど大学生になった時期がコロナ禍だったこともあり、整形にも行きやすかった」とか
「外見への課金がなぜネガティブに捉えられるのか。私には納得できません」
大きな瞳にシャープな顔立ち。動画配信で生計を立てる佐渡優菜さん(仮名・24歳)は、開口一番、こんな疑問をぶつけてきた。
「コンプレックスを抱いたまま生きるのはツラいし、そこまで悩んでいる部分を変えようとしない、その惰性のほうが恥ずかしいと思っています」
初めての整形は、中学2年生のとき。母親に勧められたのがきっかけだった。
「親に『私と同じブサイクでかわいそう』と言われたり、顎がないことをクラスでバカにされたりしていたんです。なので、小学生の頃からいずれ必ず整形すると誓っていました。写真もなるべく撮られないようにしていましたね。中学2年で、母の勧めで保険適用の二重手術をしたのですが、目だけじゃ全然変わらない。まだスタート地点にも立っていないと思っていました」
友達や恋愛より顔面課金が第一
「恋愛や勉強も二の次で、ずっと“顔”のことだけを考えていた」という中高時代を過ごし、大学生になると本格的に課金生活がスタート。顎プロテーゼ、涙袋形成、顔の脂肪吸引など、コンプレックス解消のために施術へ着手していく。
「惜しみなく課金できるように飲食店バイトのほか、大学2年からライブ配信も始めて、とにかく働きました。医者に『まだ若いからやらなくていい』と手術を断られたり、頰の手術で片方の唾液腺が出なくなってしまったこともありましたが、整形をやめようとは思いませんでした」
現在までの課金額は整形のほか、美容目的の歯列矯正やアートメイクなどを含めると662万円。しかし、整形や美容のための施術を重ねても、自分の顔に満足できる日は訪れていない。
「自分が納得するまでやろうと思うと、終わりが見えません。私は我が強くて、自分の性根が悪いこともわかっています。だから、せめて外見をよくしたいんです」
整形への課金のために努力できた
一方で佐渡さんは顔のパーツを大きく変えるような整形を「25歳までにしたい」と区切りを決めている。
「来年からは中身も磨けるようにしたいんです。起業も考えていて、専門学校への進学を考えています。実は体形にもコンプレックスがあるので、同じ悩みを抱えている人向けの下着などを開発できないかと考えています」
整形のために要してきた時間や労力もムダではなかったと前向きに話す。
「整形をするために、稼ぐにはどうすればいいかを真剣に考えることができた。今では動画配信だけで年収900万円。整形へのプロセスは確実に自分を強くしてくれました。顔への自信はいまだにありませんがそこは胸を張っていいのかなと思っています」
整形への課金のために努力できたと語る佐渡さん。沼から抜け出した先は明るそうだ。
【佐渡さんの課金簿】
顎まわりの整形:220万円
目元の整形( 涙袋など):35万円
肌( フォトフェイシャルなど):15万円
アートメイク:17万円
歯列矯正・ホワイトニング:330万円
美容エステ:45万円
合計:662万円
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