橘玲氏が緊急提言「地獄の円安を生き抜く戦略」。賢い投資&消費術を伝授
長期化する円安により、今後さらなる物価上昇が囁かれている──そんな地獄で私たちはどう生きていくべきなのか。ベストセラー作家・橘玲氏がSPA!読者に提言する。
現在の記録的な円安は、米国との金利差が原因とされているが、よく考えると理屈が合わない。日本の銀行で、低金利で10億円を借りてドルに投資すると、5%の金利差に円安が加わることで、ダブルで儲かることになる。しかしこの取引にはドルを売って円を買う相手が必要で、こちらは金利差と為替差損で大損してしまう。こんなことは続かないので「金利平衡説(註)」では円は逆に高くなり、5%の金利差はそれによって相殺され、得も損もなくなるはずだ。実際、’11年に1ドル=76円台をつけた超円高のときも、日本はゼロ金利で米国との金利差は大きかった。
金利差が開くたびに円安に振れ、その後は円高に戻っていくことをこれまで繰り返してきたわけだが、調整に時間がかかるのは「高金利のドルを買えば儲かる」という投機的な動きが強いからだ。機関投資家も理論通りに円高に相場を張ると損をするので、「大衆には逆らえない」と、ドル買い円売りのポジションを取ることになる。現在この状況が思いのほか長く続いているが、無限に富を獲得できる「フリーランチ」はあり得ないので、いずれはどこかで円高に反転するだろう。
ただ、日本の物価が上昇し、日銀が利上げを余儀なくされるまでは、この状況が続く可能性はある。
1ドル=160円台後半まで円が下落し、日本の金利が上昇しはじめると、ゼロ金利を前提にしている日本経済は厳しい局面を迎えるだろう。変動金利のローンを組んでマイホームを買った人は、返済が苦しくなって家計が破綻してしまう。ハイパーインフレになるのか私は懐疑的だが、実質賃金が下がり続け、日本人がどんどん貧乏になっていくシナリオは十分あり得る。
そうしたなか、私たちはどのように資産を守るべきなのか。私は20年以上も前から「日本人は日本円のリスクを取りすぎている」と一貫して指摘してきた。日本で働き、日本円で預金し、国内にマイホームを所有する「円資産しか持っていない日本人」は、まさにいま円の為替リスクを実感しているはずだ。