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46歳で弁護士に。人身売買と闘うヒーロー・指宿昭一「弁護士になる気なんて全くなかった」

 東京・高田馬場駅から徒歩数分、事務所が入居する雑居ビルの玄関先に、汗を滲ませて現れた指宿昭一氏。胸元に弁護士バッジをつけていなければ、どこにでもいる普通のおじさんと言って差し支えないだろう。 指宿昭一氏 だが、彼こそが今年3月、名古屋の入管施設で亡くなったスリランカ人女性の代理人を務め、外国人技能実習生制度廃止の陣頭に立ってきた人物なのである。46歳で弁護士となった後、14年間闘い続けてきた外国人技能実習生制度とは。そして、中高年からのリスタートとは……?

政府が国際社会からの追及を避ける外国人労働者問題

――アメリカ国務省から「人身売買と闘うヒーロー」に選ばれ、どんなお気持ちですか。 指宿:1か月前に選出されると電話で知らされたのですが、急に“ヒーロー”と言われてびっくりしてます(笑)。仲間に会うたびに「“ヒーロー”おめでとう」と言われて正直、こそばゆい。妻から特にコメントはなかったのですが、むしろそのほうがありがたい(笑)。でも、これまで仲間と共に「外国人技能実習生制度」をなくすため、技能実習生を支援してきた活動が評価され、同制度の廃止に弾みがついたことは、非常に喜ばしいことだと思っています。 ――日本政府から何か反応はありましたか。 指宿:全くありません。でも、かなり衝撃を受けているようです。毎年、アメリカ国務省は「人身取引報告書」を発表すると同時に、「人身売買と闘うヒーロー」を表彰してきました。実は日本政府はこの「人身取引報告書」の評価を相当気にしています。私たちも毎年、日本の外国人労働者問題の情報を提供してきましたが、ついに’20年の報告書では日本政府の人身取引問題への取り組みの不十分さを指摘し、「Tier 2」へ格下げしました。 今年の報告書でもTier 2が維持されただけでなく、さらに厳しい評価が下されています。しかも、今年は「外国人技能実習生」問題に着目して私に賞を受賞させているので、ダブルでショックを受けたようです。上川陽子法務大臣が定例記者会見で、「米国が独自に作成したもので、法務省として答える立場にない」と言っていましたが、その反応からも相当嫌がっていると感じました。

「外国人技能実習生」制度の問題点

ウィシュマ・サンダマリさんの遺族

名古屋入国管理局の施設で亡くなったスリランカ人女性のウィシュマ・サンダマリさんの遺族

――指宿弁護士の受賞に関しては何もコメントしなかったんですね。 指宿:実は上川大臣とは、名古屋入国管理局の施設で亡くなったスリランカ人女性のウィシュマ・サンダマリさんの遺族と共に5月に面会したばかりなんです。しかし、そのときも完全に無視されました。遺族とは手を握ってハグしていましたが、私が話しかけても応じないだけでなく、名刺も受け取らない、目も合わせないという大人げない対応でした。もし政府としてきちんと取り組んでいるのであれば、「日本政府はそうは考えない」「指宿は表彰に値すると思わない」とはっきり言えばいいんですよ。 ――「外国人技能実習生」制度の、どんな点が問題なのでしょうか。 指宿:外国人が日本で技術を学び、母国に持ち帰って活用してもらうという“国際貢献”の建前の下につくられたのが「外国人技能実習生」制度です。働くことが目的ではないことになっていますが、それは真っ赤な嘘です。しかも、転職や移動の自由はなく、職場に問題があっても、雇用主に抗議すれば「強制帰国」させられてしまう。技能実習生は母国の送り出し機関やブローカーに保証金や渡航費用を支払うために多額の借金を背負って来日しています。 ベトナム人の場合は現地の年収の4年分にもなる約100万円もの金額を搾取されています。もし途中で帰国させられたら、保証金が没収されるばかりか、違約金まで請求されることもあり、残るのは莫大な借金だけ。だから、雇用主から賃金未払いやパワハラ、セクハラの被害を受けても、強制帰国を恐れて逆らえず、人権侵害や人身取引の温床になっているのです。
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なぜ弁護士になろうと思ったのか
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