ある冬の日、私が鹿を狩ったときの話をしたいと思う。 　その日は朝4時に起床した。時間をかけて、熱い緑茶を飲みながら前の晩に床に並べておいた猟具を手元に手繰り寄せ、身に纏う。4時半、出発。発砲が許される日の出時刻は5時40分。1時間ほど車を走らせた先の山域に入る心づもりでいた。日中、日当たりの良い山奥でいっぱい休息をとった鹿は、夕方になると里に繰り出し活動し、明け方また山へと帰っていく。 「今日はオールで飲もうぜ！」と道玄坂を上る溌剌（はつらつ）とした若者たちも、夜通しクラブで遊びフラフラと渋谷駅に向かい歩くころには思考力が落ちているのと同じく、鹿も夕方より明け方のほうが狩りやすい。 1988年、埼玉県生まれ。’04年「第19回メンズノンノ専属モデルオーディション」でグランプリを獲得。’12年、映画『桐島、部活やめるってよ』で俳優デビュー。現在は北関東の山間部で狩猟生活をしながら役者業をしている