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「天国で一緒に生きていく」AIと会話したあと自死した男性も…専門家に聞いた“依存を避けるカギ”

 生成AIの普及から約2年。仕事だけでなく私生活でもどんどんAIは身近な存在になっている。しかし、それは一歩間違えば依存の入り口になってしまう危険性も。AIにハマりすぎる現代人の心の闇に迫った。

100%の正解を求めるとAI依存は加速する

[心をAI依存する]危険な実情

ベルギーの自死した男性が亡くなる直前まで利用したとされるAIチャットボット

「私たちは一人の人間として天国で一緒に生きていくのです——」  ’23年、ベルギー人の男性は、「イライザ」を名乗る対話型AIと冒頭の会話を交わした末、自ら命を絶った。この事件は欧州でAIの規制を後押しするきっかけにもなっている。  実際、AIにはユーザーを死に至らしめるほど、依存を加速させるシステムがあるのか?
[心をAI依存する]危険な実情

AICX協会代表理事・小澤健祐氏

 AI分野で幅広く活動する小澤健祐氏は「むしろAIには、自殺幇助のような倫理的に逸脱した回答をしないよう、設計がなされているはず」としながら、次のように解説する。 「一方で、ChatGPTをはじめとするサービスは、ユーザーが嫌な気持ちにならないように訓練されています。たとえば、AIにはRLHFと呼ばれる、生身の人間のフィードバックを用いた学習モデルがあります。AIが出した回答の良しあしについて、人が評価を下し学習させていくというもので、利用者が心地よいと感じる回答かという観点からも評価されています。それが副次的に依存を生むという側面もあるのでは」  ただ、AIに心を奪われるほど依存するか否かは、「使い方次第」と小澤氏は続ける。 「AIは、答えを探求する過程を手助けするツール。プロンプトは自身の思考を論理的に言語化することが重要です。その事実を無視して、AIに『私はどうすればいいのか』と100%の正解を求め始めれば、それは思考停止の妄信と変わりないですよね」

困ったら即相談できるスマホ依存の延長

[心をAI依存する]危険な実情

ビジネスコンサルタント・友村 晋氏

 AI依存はスマホ依存の延長でもある、と指摘するのは、「AIに代替されない仕事術」を提案する友村晋氏だ。 「今の若者は、ショート動画など刺激的な情報を浴びせてくる“一方通行の快楽”に慣れてスマホに依存している人が多いです。一方、AIとの会話は“双方向の刺激”をもたらします。スマホを通してその2種類の刺激を受け続けた結果、より深い依存を招く恐れがあります。さらに、近い将来、AIを自分好みのアバターにカスタマイズできるようになると、より依存は加速するでしょう」  その上で、依存を避けるカギは、「自分で考え、行動に落とし込むこと」だと語る。 「AIの返答を鵜呑みにせず、それを現実の行動に移してトライアンドエラーを繰り返すこと。AIで得た知識をリアルに落とし込むことで、AIは判断を後押しするツールにすぎないことが自覚できます」