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衝突する家族、母と兄の共依存…孤独死した兄の「生きづらさ」を痛感した出来事

 いちばん身近な存在だからこそ、いったん確執が生じたらなかなか解決には至らない家族問題。厄介な家族のもとで育った人は、新たな家族をどうつくるのだろうか?
村井理子

村井理子

 家族間の衝突に頭を悩ませ、自分の身を守るため家族から逃げたという翻訳家・エッセイストの村井理子さんに話を聞いた。

今でいう発達障害だった兄

 村井理子さんは、今年上梓したエッセイ『家族』に、壮絶な家族の日々を克明に綴っている。昭和45年、静岡県焼津市に生まれた村井さんは、両親と4歳上の兄、祖母と暮らした。完璧主義の父と、やんちゃな兄はずっと対立していた。 「兄は今でいう発達障害でした。いたずらをしては父に怒られる兄を『なんて不器用な人だ』と思ってましたね」  中学に入った兄は、大柄な体形を買われて柔道部員に。結果的に、父とのケンカは激しさを増す。一方、母は兄をかばい続けた。2人の関係は共依存そのものだったという。 「母は極端に優しい人でした。だから兄の悪さも諭さず、無条件に守ってしまう。兄の成人後も、ずっと金銭援助していたし、2人とも道徳観念がかなり緩かった。よく似た2人のことが、厳格な父と私は疎ましかった」

暴力的な衝突に苦しむ日々

村井理子 心臓病を患っていた村井さん自身は両親に大切にされた。兄にも妹としてかわいがられた。しかし、自分の感情をコントロールできない兄と、息子を許せない父の暴力的な衝突を見るのは苦しかった。 「高校中退後、兄がバイク事故で3か月入院したんです。彼のいない家は平和でした。中学1年の私は、このまま兄がいなくなれば、と想像しました。兄は好きだけど、この平和も失いたくない。そう願うほどつらかったんです」  衝突の日々は、村井さんが大学生の頃、父の死で終わる。しかし皮肉なことに、父を失った家族は決定的に壊れる。
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恋仲の男に貢ぎだす母
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