M-1をきっかけに地上波の仕事も増えたヤーレンズ。しかし、「もちろんテレビのオファーが来たら全力でやりますけど……」とやや浮かない顔の楢原。一方で「自分たちのためにも、もっとテレビで活躍したい」と熱く語る出井。二人の温度差のある掛け合いは続く。
(4回/全4回 ※週刊SPA! 2024年7月16日・23日合併号「エッジな人々」より)
ボケたいのではなくウケたい楢原
――調べた結果、この2人は言いたいことがある人と、ボケたいだけの人なのかなって。
出井:ハハハハハ! そうですね、たしかに。言いたいことがないんだってことに気づいて、じゃあいっぱいボケたほうがいいね!って。でも、舞台に出てきていろんなボケをいっぱい言う人って変じゃないですか。だから漫才コントにしようって。そのときの話し合いでそこまで全部固まっていった。
――変なキャラクターが毎回出てくるような構造にすればいくらでもボケられるし、その時期に髪型が変わったと思うんですけど、外見からちょっと変な感じも出るように”わかりやすいプロデュース“をした結果、お客さんにも違和感なく受け入れられるようになって。
出井:そこもラインは探しましたね。あまりに変な髪型とか衣装だと違うし。「成立はしてるけどちょっと変」ぐらいを模索した結果こうなりました。
楢原:ギリのところをね。これは違和感あるだろっていう。でも、僕はべつにボケたいんじゃないんですよね、ウケたいんです。
――ああ、ボケじゃなくてもウケればいい。
楢原:そうです。たぶんボケたい人だったらいまもボケるじゃないですか。でも、この現場はべつにウケてもしょうがないと思って。
――ちゃんと原稿には活かしますよ(笑)。
楢原:そしたら「(笑)」とかになっちゃうじゃないですか。これも難しいところで。
出井:ああ、難しいところだね。
文春のインタビューでボケるも「文字になると恐かった」
――現場の空気が伝わらなくなる。
楢原:だから文章って難しいなと思って。それこそ『文春オンライン』のインタビュー受けたとき、わりとボケで言ったトーンのことが文字になると怖い感じになっちゃって。
――いいインタビューだったんですけど、ふたりともすごいまじめに見えましたよね。
楢原:そうです。文章になるインタビューって振り切って変なこと言わないとおもしろくないんだなって。いま変なことずっと言い続けたらたぶんおもしろい文にはなると思うんですけど、そんなの読みたくないじゃないですか。せっかくのインタビューなのに。
出井:ハハハハハ! 確かにそうだな。
――誌面の正解がまだ見えてないんですね。
楢原:誌面でウケるのは難しいから。誌面でウケるならエピソードトークだと思うんです。でも僕はそういうのはあんまり好きじゃないんで、だったらまじめに答えるほうがいいなって。ウケを狙うような場でないならボケない。ボケたがりではなく、ウケたがりなんです。
大衆をきっちり笑わせることが存在意義
1970年、東京都出身。プロ書評家、プロインタビュアー、ライター。主な著書に『男気万字固め』(幻冬舎)、『人間コク宝』シリーズ(コアマガジン)、『サブカル・スーパースター鬱伝』(徳間書店)、『書評の星座』(ホーム社)など