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「アタマおかしい本屋になる!」。赤字書店「書泉」に転職した“素人社長”の挑戦

 斜陽産業と言われる出版業界。書店も例に漏れず、秋葉原や神保町に店を構える老舗書店「書泉」も赤字経営が続いていた。  しかし、2年前に就任した素人社長は、“趣味人御用達”の尖った書店へと舵を切り、99%の読まれない本に金脈を見いだしていく、その快進撃とは?

勢いでエントリーして大幅キャリアチェンジ

エッジ0910 売れる本!? そんなの僕はわからないよ。だって素人なんだから──。そう照れ笑いするのは今、書店業界で注目を集める、老舗書店グループ「書泉」の代表取締役社長の手林大輔氏だ。  年商30億ながら赤字で厳しい経営を強いられるなか、’22年9月に“通いたくなる本屋”の再建を託されたその男は、なんと書店業界とは無縁で経営も未経験。「外から来た素人だからこそ気づくこともある」と穏やかな眼差しを向ける手林氏に、書店の問題点や生存戦略を聞いた。 ──’22年7月にベネッセコーポレーションを退職し、同年9月から「書泉」の社長へと、キャリアチェンジされています。一社員から社長へと、急激なキャリアアップなのですが、ヘッドハンティングをされたのでしょうか? 手林:まさか! ミドル向けの転職サイトに「神保町界隈で数店舗の書店を経営する社長」と公募があったから、勢いでエントリーしちゃったんです(笑)  もともとは前職で「こどもちゃれんじ」のキャラクター「しまじろう」を使ったコンサートや、キャラクターのライツ事業での海外展開などを担当していたこともあり、エンタメ業界への転職を希望していたんですが……、毎週、何社か応募しても書類審査で跳ねられ、面接さえしてもらえなかったんですよねえ。 ──知名度の高いベネッセでのノウハウや経験が欲しい企業はあると思うのですが。 手林:甘かった! 転職活動が初めてとはいえ、前職で重ねた実績で少しは引きがあると思っていたけど、50代の転職活動は、まあ世知辛い(笑)。 ──ちなみに、書泉には以前から通われていたんですか? 手林:いや、ぜんぜん。神保町界隈で働いていたことはあるけど、僕は三省堂派! 書泉はたまにマンガを買うくらいでした。

未知の業界に足を踏み入れる不安は?