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大好評発売中!『エッジな芸人たち』より 野田クリスタル×髙比良くるま「お笑いに論もクソもない」

13組の尖った芸人たちの刺激的すぎるインタビュームック『エッジな芸人たち』が好評発売中だ。 登場芸人には「野田クリスタル×高比良くるま」や「ヤーレンズ」をはじめ「トム・ブラウン」「さらば青春の光」「ウエストランド」「街裏ぴんく」「ハリウッドザコシショウ」「空気階段」「爆笑問題」など超豪華なメンバーが集結。 今回はそのなかから今もっともエッジの効いた(?)男たち「野田クリスタル×高比良くるま」のインタビューと写真を一部公開。 お笑い賞レースが乱立し、そこに視聴者による考察、分析、まとめがある時代になって久しい。ただ純粋にバカ笑いすることはどこにいったのか。漫才日本一になったボケの2人が大真面目に現代お笑いを語った。

人の痛みがわかる王者

日本一の若手漫才師を決める「M−1グランプリ」の決勝まであと1か月と迫るなか、お笑いマニア大注目の対談が実現した(取材日は’24年10月31日)。  ’20年王者・マヂカルラブリーの野田クリスタルと、’23年王者・令和ロマンの髙比良くるま。前者は漫才論争を巻き起こした破壊者ならば、後者は結成最速で同大会を制した研究者か━━。  この2人がAmazon Original『最強新コンビ決定戦 THEゴールデンコンビ』(以下、THEゴールデンコンビ)で、文字通り異色の“王者コンビ”を結成した。対象的な2人だからこそ語れるお笑いの黄金方程式とは? ――髙比良さんは『THEゴールデンコンビ』出演が決まり、野田さんを相方に指名しました。やはりM-1王者という実績が大きな理由ですか? 髙比良:いや、肩書ではなく完全にスペックですね。この番組では即興のコントが続くので、瞬時にアイデアを出せる人が強いかなと。  とはいえ、優勝を狙うならキャッチーさがないと難しい。僕は平凡な見た目でキャラがわかりづらいという点で不利ですが、その点、野田さんにはマッチョという明確なキャラがある。 野田:困ったときにマッチョを使えるのは強いよな。

「本当は野田さんのようになりたかった」

――髙比良さんは野田さんを“理想の芸人”と褒めたたえていましたね。 髙比良:自分にない長所が多い。キャラクター的なポップさと、芸人としてのパワーを兼ね備える。そして長い地下芸人活動や、過去のM−1最下位の経験から人の痛みもわかる。 野田:まぁ、かなり下積みが長かったからな〜。 髙比良:芸人仲間のなかでも、野田さんへの信頼は厚いんです。15歳からお笑いの世界に飛び込み、地下芸人も経験しているけど、腐らずに結果を残す。明るい笑い、暗い笑いもできる、まさに笑いのカリスマですよ。  本当は野田さんのようになりたかった。でも、もう俺もM−1王者だからなれない。というか、大学に行った時点でもうダメなんです。“こうならなきゃいけなかったのにな……”って後悔しているほどです。

「地下芸人=尖っている」は間違い

――野田さんはたくさんの地下芸人を見てきたと思うのですが最速で頂点に輝いた髙比良さんとは何が違うと感じますか? 野田:いや、くるまはいわゆる“地下”のにおいもしますよ、尖ってますから。でも、尖って独特なのが“地下芸人”ってイメージも勘違いで。単純に面白くない人たちが大多数なんです。 髙比良:もちろん、地下にも面白い人はいますけど、この現状はメディアが「貧困ビジネス」のようなものを仕かけてきたからこうなったというか……。 野田:YouTubeで「逆に今、西成行こうぜ」という感覚で「地下芸人こそ独特で面白いぜ!」みたいなことを言うヤツとかね。 髙比良:“いわゆる地下芸人”像が仕立て上げられてしまった。 野田:くすぶってた過去のある僕だから言えるけど、過度に持ち上げちゃダメだと思います。

M-1決勝が「ファンタジックな舞台」でなくなった

――マヂカルラブリーさんがM−1で優勝されて「漫才論争」が起こったとき、髙比良さんはどう見られてましたか? 髙比良:いよいよそんなことを言いだす時代が来たか、と。M−1の終わりを見ましたね。そんな論争がSNSでバズっちゃうんだっていう。その“お気持ち表明”界隈の多さが臨界点を超えた感じがした。これから世の中の流れが“分析”とか“考察”に傾いちゃったら……。 野田:つまらないよねぇ。 髙比良:「漫才か漫才じゃないか論争」のピークは、去年僕らが優勝したM−1決勝だと思ってます。視聴者もお笑いに詳しくなりテクニック論を語り、出場者のネタバレも横行した。その結果、決勝が全然ファンタジックな空間じゃなくなって、盛り上がらなかった。 野田:去年に関しては……それはあるかもね。 髙比良:M−1は本来、決勝であってもライブ。何が起こるかわからない、奇跡も起こりうるファンタジックな舞台だからこそ盛り上がる。去年は全部それが“はぜた”。  ナイツの塙さんが冒頭で謝ったり、ともこさんが初めての審査員で「緊張します」って言っちゃったのもリアルさを増した要因だと思う。そんなリアルトーンで見たら笑えないよ。あの空気でダンビラムーチョがウケるわけがない(笑)

意図していないことが拡散される時代

――ファンタジーがなくなるとお笑いは盛り上がらない。 髙比良:今、M−1だけではなく、バラエティ番組やイベントでもファンタジーがないですね。 野田:舞台上で言ったことを誰かがSNSで切り抜いて勝手に発信しちゃったり。 髙比良:僕の経験であったのが、お客さんの空席を「転売ヤー見っけ!」みたいなボケでいじったんです。  それを「くるまが転売ヤー見っけ!と言っていた」と誰かがSNSに投稿して、状況も知らない第三者が、僕が転売ヤーを本気で嫌ってるように描く。現場ではウケているのに。 そして話は「漫才論争」の危うさについて移る――。 絶賛発売中の『エッジな芸人たち』ではインタビューの完全版のほか、未公開写真も掲載!今すぐ要CHECK! エッジな芸人たち【Crystal Noda】 1986年、神奈川県横浜市生まれ。15歳で芸人デビュー。相方の村上から声をかけられマヂカルラブリーを結成。『R‐1ぐらんぷり2020』優勝、『M‐1グランプリ2020』優勝 【Kuruma Takahira】 1994年、東京都練馬区生まれ。慶應義塾大学のお笑いサークルで松井ケムリと「魔人無骨」を結成。’19年に「令和ロマン」へと改名。『M‐1グランプリ2023』優勝、『第45回ABCお笑いグランプリ』優勝 <取材・文/南ハトバ 撮影/宮下祐介>
別冊SPA!エッジな芸人たち エッジな芸人たち

13組の尖った芸人たちの刺激的すぎるインタビュー集!