暴力を振るわれても「月給は多くて30万円前後」…介護業界で働く35歳女性が直面する“現実”「安心して生活ができるか疑問」
2023年11月に上梓された畑江ちか子さんの『気がつけば認知症介護の沼にいた。』(古書みつけ)は、超高齢社会を迎えるこの日本の現状を伝えてくれる一冊だった。
現役の介護職員である彼女が、業界の未来に思うこととは――本人の口から忌憚ない意見を語ってもらおう。

――認知症介護がたいへんであることは誰もが何となく想像しつつも、肌感覚として知っている人はごく一部だと思います。ご著書は、それがダイレクトに伝わってくるものでした。入居者から暴力を振るわれることもあるとか。
畑江ちか子:そうですね、入職1年目だったと思いますが、男性の利用者からこめかみに鉄拳を喰らいました(笑)。原因は男性利用者同士の喧嘩だったんです。ひとりは昭和の雰囲気漂う頑固な方、もう片方はいわゆるスマートなジェントルマン風な方で、もともと相性がよくない2人だったんですよね。
それで、テレビのリモコン争奪戦から殴り合いに発展して……。施設長からは「喧嘩は身体を張ってでも止めるように」と言われていたもので、当時は施設のなかでも若手だった私は仲裁に入りました。すると、こめかみに激痛が! 今もなお、トラウマになっている出来事です。
あの頃はまだ、トラブルが起きる予兆みたいなものがわからなかったんですよね。経験を積んだ現在では予測できるようになったんですが……。
――コミカルにおっしゃるけど、結構な事件ですよね。やはり男性のほうが凶暴な傾向がありますか?
畑江ちか子:いえ、性別は関係ないですね。女性利用者でも、噛みついたり暴れたりする人はいますから。ただ、たいていの場合は、入居前に実地調査といって施設の責任者がご自宅や病院に伺って面談のようなことを行うので、暴れそうな方は事前共有されているんです。既往歴や服用している薬の情報などから、ご本人がどんな状態なのかも予測が立ちますしね。
――凶暴性のある利用者以外に、たいへんなケースはありますか。
畑江ちか子:確かに暴力を振るわれるケースはトラウマになりかねませんし、重大な問題です。でも実務で最も困るのは、凶暴な利用者よりも、介入をさせてくれないパターンですね。いわゆる“介護拒否”です。言うまでもなく介護の重要な目的には、健康や衛生の保持があります。介護拒否をされると、そうした前提が崩れてしまいかねないため、職員は頭を悩ませます。

畑江ちか子さん
こめかみに鉄拳を喰らったことも
凶暴な利用者より困るのは…
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki
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