インフレ時代は「持ち家一択」に?マンション売却で損しない立地選びと、再開発リスクの現実
一流大衆誌『SPA!』の暴走で12回も続いたこの連載も、ついに最終回です。のらえもん的に語りたいことは、あんな夢こんな夢いっぱいあるんですけど、最終回のテーマは「賢いリセール(再販売)」とさせてもらいます。
「東京のマンションに住みたい人向けの連載で、売り方を教えられても……」と考える読者もいるでしょう。しかし、マンション購入後には望むと望まざるとにかかわらず売却リスクは発生するもの。その理由は栄転や、双子ちゃんが生まれたなどおめでたいものから、離婚・破産・死別ななどおめでたくないものまでさまざま。だから、リセールのことまで意識したマンションライフを送るべきなのです。
では、高く売れるマンションにはどんな特徴があるか? のらえもんの独断で売却価格の決定要件を数値化すると、立地が70%、マンション選びが20%、そして部屋の状態が10%といった具合です。結局、不動産は「街」で決まるものなので、その街が成長しているか、衰退しているかが重要です。そのため、本連載では、まず「人口が増え続けている街」のマンションを狙いましょうと勧めてきました。
近年、特に目立ったのは、再開発という一発逆転ホームランで人口が急増するエリアでした。その典型例が神奈川の武蔵小杉です。かつては京浜工業地帯の一角を担った工場地域だったのに、今やタワマンとモールが林立する憧れの街に変貌しました。
しかしながら「再開発=勝ち確」といかないのが最近の現実です。例えば、千葉の津田沼駅南口。地元タワマン住人がワクワクしながら待っていた再開発が、駅前商業施設「モリシア津田沼」閉店後に計画が中断されてます。原因は建設コストの高騰です。再開発は長丁場ゆえに、経済環境にも左右されやすいのです。
続いて20%の要素を占める「マンション選び」について。戸建てにおける「立派な家」といえば、門構えがしっかりして、手入れの行き届いた植栽を備えた豪邸が思い浮かびます。個人でこれらを手に入れるのは無理ゲーですが、区分所有者として共有するなら実現可能、これがマンションの強みです。大規模マンションなら、シンボリックな外観、ホテルライクなエントランスなど生活の“便利さ”と“見栄え”が両立する。当然これは次の買い手にも刺さります。
一方、小規模マンションではどうしても限界があります。門構えやエントランスはシンプルで、植栽は申し訳程度。豪華さや重厚感に欠けるので、次の買い手のテンションは上がりにくい。こうした建物のスケール感や外観は購入後に変えられないので、購入時にこだわるべきと考えます。
最後に部屋について。中古マンションを売るとき、室内の印象が価格に与える影響はそれほど大きくありません。多少、壁に傷があっても30万円程度のコストをかければ、クロスを張り替えることが可能なので。一方で、悩ましいのが床の張り替えです。工賃が高いうえに、床暖房(特に温水式)の場合はシステムごと交換が必要になるケースもあります。だからこそ、マンション購入直後からラグを敷いたり椅子脚にフェルトを貼るなどして、ダメージコントロールを心がけるべきです。あとは、ペットを飼っている家の場合、匂いを残さないように気をつければ、部屋の状態の悪さでリセール価値が下がることはなくなるでしょう。
マンションアナリスト。「のらえもんブログ」やSNSでマンション購入に役立つ情報を13年以上にわたり発信。著書に『絶対に満足するマンション購入術』(廣済堂出版)など。「スムログ」発起人。住み替え支援サービス「すみかえもん」もプロデュース
