更新日:2025年08月22日 16:16
ライフ

愛され続ける居酒屋『もつ焼 信』で出会った「10個まで同じ値段?」の目玉焼き/カツセマサヒコ

ただ東京で生まれたというだけで何かを期待されるか、どこかを軽蔑されてきた気がする――。そんな小説家カツセマサヒコが“アウェイな東京”に馴染むべくさまざまな店を訪ねては狼狽える冒険エッセイ。今回訪れたのは、京急線立会川駅にある『もつ焼 信』というお店。一見、変哲もない普通のお店なのだが、目玉焼きが面白いという。 そこで、著者が出会ったものとは……願いは今日も「すこしドラマになってくれ」。

続けたいし、愛されたい【立会川駅・もつ焼 信(居酒屋)】vol.7

なんだかもう飽きている。 初めての週刊雑誌連載なのに、第10回を数える前に一度目の「飽き」が来た。想像していたよりもずっと早い。 思えば何事も、長く続いたことはなかった。大手企業のサラリーマンは5年で辞めて、編集プロダクションの会社員を3年で辞めて、年始から始めた日記は4日でやめた。 辞めがちな自分が尊敬するもの。それは、老舗、という勲章が付く店である。商売なのだから飽きの問題だけでなく、お客がいなければ成り立たないはずで、長く続いている飲食店は、それだけ長く愛されていることになる。もしくは、地主が節税を兼ねた趣味でやっているだけである。 品川区の大井競馬場の近くに、「もつ焼 信」という店がある。かつては「お山の大将」という名前だったが、店主が代わったタイミングで店名も新しくなった。メニューや内観に、変わりはない。1989年から守り抜いている味と店構えに、ファンが多いという。 「その店の目玉焼きが面白いので、食べてみてください」

1986年、東京都生まれ。小説家。『明け方の若者たち』(幻冬舎)でデビュー。そのほか著書に『夜行秘密』(双葉社)、『ブルーマリッジ』(新潮社)、『わたしたちは、海』(光文社)などがある。好きなチェーン店は「味の民芸」「てんや」「珈琲館」