餃子ブロガーの後輩に『東京で一番美味しい餃子は?』と尋ねて即答された町中華『赤坂珉珉』との出会い/カツセマサヒコ
ただ東京で生まれたというだけで何かを期待されるか、どこかを軽蔑されてきた気がする――そんな小説家カツセマサヒコが“アウェイな東京”に馴染むべくさまざまな店を訪ねては狼狽える冒険エッセイ。今回訪れたのは、後輩で餃子好きのH君に「東京で一番美味しい餃子は?」と聞いて即答された『赤坂眠眠』。
港区町中華の名店と呼ばれるお店の餃子のお味は? 今日はどんなドラマが待っているのだろうか。
編集プロダクションで働いていた頃、全社的に仕事が回らなくなり、学生インターンを雇うことになった。集まってくれたインターン生とはすぐに打ち解けたが、その中でもとくに、H君という男子が気になった。
H君は、暗かった。なにかと慎重に動くタイプで、放っておくと思考の沼にハマって動けなくなる傾向があった。そんな不器用なところも好きだったし、「俺、年上とか先輩にあんまり好かれないんすよね」と寂しそうに言うところも、どこか面白かった。
そんな彼が一つだけ自信を持っている趣味が、日本中の餃子を食べ歩くことだった。仕事の傍ら、個人ブログの域を超えた餃子メディアを粛々と更新し、そこそこの視聴数を稼いでいた。
この連載がスタートしてから、久々にH君と会う機会があった。彼はすでに三十路を越えていたが、相変わらず「先輩に好かれないから誘ってもらえて嬉しかったす」とか言っていて、三十代にもなってまだ年上に好かれたいと思うこじらせ方がやっぱり独特で面白かった。
久しぶりに会ったH君は、相変わらず餃子を食べ続けていた。これは渡りに船と思い、都内で一番美味い餃子を尋ねたところ、彼は東京都港区にある「赤坂珉珉」だと即答した。「一つの到達点みたいな餃子です」と言い切った。
港区赤坂。そこは芸能人も御用達のギラギラとした飲食店が並ぶ、資本主義の巣窟のような街である。まさか不器用でこじれているH君からその街の名が出るとは思わなかったけれど、彼が推すなら信じようと、「赤坂珉珉」に足を運んだ。
1986年、東京都生まれ。小説家。『明け方の若者たち』(幻冬舎)でデビュー。そのほか著書に『夜行秘密』(双葉社)、『ブルーマリッジ』(新潮社)、『わたしたちは、海』(光文社)などがある。好きなチェーン店は「味の民芸」「てんや」「珈琲館」
餃子と後輩【赤坂駅・赤坂珉珉(中華屋)】vol.9
1986年、東京都生まれ。小説家。『明け方の若者たち』(幻冬舎)でデビュー。そのほか著書に『夜行秘密』(双葉社)、『ブルーマリッジ』(新潮社)、『わたしたちは、海』(光文社)などがある。好きなチェーン店は「味の民芸」「てんや」「珈琲館」



