中目黒にある犬が放し飼いの居酒屋『大衆割烹 藤八』でハイボールが進み酔った夜/カツセマサヒコ
ただ東京で生まれたというだけで何かを期待されるか、どこかを軽蔑されてきた気がする――。そんな小説家カツセマサヒコが“アウェイな東京”に馴染むべくさまざまな店を訪ねては狼狽える冒険エッセイ。今回訪れたのは中目黒駅にある居酒屋『大衆割烹 藤八』というお店。犬が放し飼いになっている、犬カフェならぬ犬居酒屋だという。そこで何が待ち受けているのか。
願いは今日も「すこしドラマになってくれ」
犬が放し飼いになっている居酒屋があるという。
それは犬カフェの飲酒可能版ということだろうか。いろいろと、大丈夫だろうか。不安にもなるが、犬が好きなので、ふらりと向かってみる。
中目黒駅から歩いてすぐのところにある、とても綺麗なカフェの横の入り口から階段を上り、扉を開ける。「大衆割烹 藤八」。今回の目当ての店である。
月曜の16時。オープンと同時に入店したので、一番客である。誰もいない店を見回す。犬もいない。テーブル席と座敷席がある、いわゆる大衆酒場のレイアウトである。
店員さんが厨房から出てきたので、一人です、と告げる。やはり、犬はいない。欠勤だろうか。そういう寂しい感じだろうか。
もう一度見回してみる。すると、視界の隅に、黒い何かが映った。厨房の入り口から、それが迫ってくる。グングン近づく。でかい。近づき、さらにでかくなる。なんだここは。真っ黒なシェパードが、放し飼いになっている酒場である。
おいで、おいで。おお、おお、よしよし。
軽く手を差し伸べると、頭を撫でさせてくれる。触れてみると、ますます大きい。
1986年、東京都生まれ。小説家。『明け方の若者たち』(幻冬舎)でデビュー。そのほか著書に『夜行秘密』(双葉社)、『ブルーマリッジ』(新潮社)、『わたしたちは、海』(光文社)などがある。好きなチェーン店は「味の民芸」「てんや」「珈琲館」
犬も歩けば酒が進む【中目黒駅・大衆割烹 藤八(居酒屋)】vol.19
1986年、東京都生まれ。小説家。『明け方の若者たち』(幻冬舎)でデビュー。そのほか著書に『夜行秘密』(双葉社)、『ブルーマリッジ』(新潮社)、『わたしたちは、海』(光文社)などがある。好きなチェーン店は「味の民芸」「てんや」「珈琲館」



