更新日:2026年04月14日 16:45
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背徳感たっぷり!日本最古の現存する浅草の地下商店街にある焼きそば屋『福ちゃん』/カツセマサヒコ

ただ東京で生まれたというだけで何かを期待されるか、どこかを軽蔑されてきた気がする――。そんな小説家カツセマサヒコが“アウェイな東京”に馴染むべくさまざまな店を訪ねては狼狽える冒険エッセイ。今回訪れたのは、浅草駅の古い地下商店街にある焼きそば屋『福ちゃん』。著者の願いは今日も「すこしドラマになってくれ」

パーフェクト・デイ【浅草駅・福ちゃん(焼きそば屋)】vol.22

 銀座線を降りて浅草駅の地下改札を抜けると、地上に出ようとするより早く、左手から強烈な引力を感じる。  天井の低い、古い地下商店街がある。入っちゃダメ、と言われているからこそ入りたくなるような(実際は誰も入っちゃダメなんて言ってない)背徳のにおいがする。  浅草地下街。ここは日本に現存する、最も古い地下商店街なのだという。 『インディ・ジョーンズ』のハリソン・フォードにでもなったつもりで、ゆっくりと歩く。緩やかにカーブした狭い道に、昭和まで逆行したようなテナントがいくつか並んでいる。中古のレコードショップや、800円でカットしてくれる床屋が目立つ。路面にはみ出すように展開されたビデオショップの前で、足を止める。色褪せたDVD(VHSではなかったから平成に訂正)が大量に陳列されている。『ミッション:インポッシブル2』がとくにたくさん並んでいるが、小津安二郎のタグが貼られた棚はごっそりなくなっていて、客層が窺える。ここは、トム・クルーズよりも小津が人気の街。  もう少しじっくり見たいと思ったが、「アダルトDVD店内にあります」と堂々と書かれた貼り紙が主張しすぎていて恥ずかしく、素通りする。  一度、地下街の奥まで歩いてみて、とはいってもその距離が体感50mにも満たないくらいなのだけれど、全体像を把握してから折り返す。  改札近くまで戻ってくる。映画『PERFECT DAYS』の劇中で、役所広司演じる中年男性が足繁く通っていた居酒屋によく似た店が目に入る。  は~、こんな店もあるのかァ~。本当に映画みたいだなァ~。こういうところでしっぽりと酒を飲んでいれば、役所広司演じる中年男性みたく若い女性に何の脈絡もなく爆モテする人生が訪れるのかなァ~(そんなわけがないし映画だとしてもあの謎の爆モテ展開はさすがにおかしくない!?と苦言を呈したい派)、などと思いながら、カウンター席に座ってみる。  あまりにも情緒。昔ながらの魅力がフルスロットル。  店名をググってみる。「浅草焼きそば 福ちゃん」。映画『PERFECT DAYS』のロケ地として有名に。  正解だった。本当に役所広司がここにいたらしい。

1986年、東京都生まれ。小説家。『明け方の若者たち』(幻冬舎)でデビュー。そのほか著書に『夜行秘密』(双葉社)、『ブルーマリッジ』(新潮社)、『わたしたちは、海』(光文社)などがある。好きなチェーン店は「味の民芸」「てんや」「珈琲館」