更新日:2026年04月14日 16:45
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もうすぐ創業100年を迎える渋谷の老舗お好み焼き店『たるや』で食べた塩味もんじゃ焼き/カツセマサヒコ

ただ東京で生まれたというだけで何かを期待されるか、どこかを軽蔑されてきた気がする――。そんな小説家カツセマサヒコが“アウェイな東京”に馴染むべくさまざまな店を訪ねては狼狽える冒険エッセイ。今回訪れたのは、渋谷にあるお好み焼き店『たるや』。まもなく創業100年を迎えるお店であると耳にした著者の願いは今日も「すこしドラマになってくれ」

そして歴史は更新される【渋谷駅・たるや(お好み焼き・もんじゃ屋)】vol.21

 小6の頃に私の街に越してきた転校生は、なにかと発言のスケールが大きかった。 「私、22世紀も生きるのが目標なんだよね!」  ある日の給食の時間、ガハハと笑いながら彼女が言った。当時1998年。22世紀は100年以上先のことだった。  わざわざ「100年」とは言わずに「22世紀」と言ったところが、彼女の器の大きさを象徴しているように思えた。彼女には「宇宙」とか「白亜紀」とか、なぜかそういう、とても大きな言葉が似合った。  その人のことを思い出したのは、渋谷駅から徒歩10分、道玄坂の途中にある百軒店のお好み焼き店「たるや」が、もうすぐ創業100年を迎えると聞いたからだった。  猥雑さと昭和の薫りが今も残る百軒店エリアは、かつては渋谷の中心地だった。その歴史は関東大震災の翌年にまで遡るらしいが、私はユーロスペースやSpotify O-EASTに映画やライブを観に行くときに早足に通過するくらいで、その歴史の凄みをあまり実感せずに生きてきてしまった。 「たるや」もまた、創業昭和6年と、本当に古くから百軒店を支えてきたお好み焼き屋だった。  引き戸を開ける。エアコンの冷気とともに、鉄板の熱も届く。靴を脱いで上がる座敷席がメインで、壁にはジャズミュージシャンのポスターや写真が飾られている。BGMも、しっかりとジャズである。  座敷席に座ると、若い女性店員さんが注文を取りに来る。ハイボールと、酒の肴として人気だというもんじゃ焼きの「塩味」を頼んだ。  まだ店は空いていたので、アルバイトと思われる女性店員さんに一つ尋ねてみた。

1986年、東京都生まれ。小説家。『明け方の若者たち』(幻冬舎)でデビュー。そのほか著書に『夜行秘密』(双葉社)、『ブルーマリッジ』(新潮社)、『わたしたちは、海』(光文社)などがある。好きなチェーン店は「味の民芸」「てんや」「珈琲館」