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「中抜きなし、客を選べる」歌舞伎町の“立ちんぼ”に女性が集まるワケ。橘玲が暴く路上売春の経済合理性

「性的魅力は、資本になる」ーー。’00年代初頭、イギリスの社会学者キャサリン・ハキムが提唱した「エロス資本」という概念がある。若い女性の性的魅力は経済的価値を持つ「資本」であり、それをマネタイズすることには経済合理性がある、という考え方だ。 キャバクラ嬢、コンカフェ嬢、アイドル、立ちんぼ……。本連載では、作家・橘玲がエロス資本の視点から、彼女たちの行動と動機を深く掘り下げていく。 (※本記事は週刊SPA!連載「エロス資本論」Vol.1を元に構成しました)

路上に立ち続ける 「立ちんぼ」から 見える経済合理性

歌舞伎町のホテル街を歩くと、路地の脇に若い女性たちがぽつぽつと立っている。 かつて大久保公園周辺に集まっていた「立ちんぼ」は、警察の取り締まり強化でホテル街へと分散したが、それで歌舞伎町の”立ちんぼ市場”が消えたわけではない。週末ともなれば、いまなお30〜50人ほどの女性が立っていることも珍しくない。 立ちんぼは当然ながら違法売春であり、「風俗の最底辺」をイメージするかもしれないが、実はその認識はかなりズレている。取り締まりの影響で「かつてのように一日10万円稼げる日は減った」との声もあるが、それでも彼女たちが立ちんぼという選択をするのは、そこに確かな「経済合理性」があるからだ。 路上売春の現場では、違法行為を抜きにして、極めてドライで冷徹なまでにインセンティブに忠実な、一種の「究極の自由市場」が成立している。

「中抜きなし、客を選べる」という経済合理性

通常の風俗店の場合、男性客が例えば1万8000円の料金を支払ったとしても、店の取り分などの「中抜き」が発生するため、女性の手取りは1万円程度に減ってしまう。さらに出勤ノルマや風俗ポータルサイトの日記更新などの”労働”も発生する。 その点、立ちんぼは個人営業だ。彼女たちが風俗店(デリヘルやファッションヘルスなど)に籍を置かず、あえてリスクのある路上を選ぶ最大の理由は、「中抜き(マージン)がない」ことと「客を自分で選べる」という2点に集約される。立ちんぼの現在の相場は、コンドームありで2万円、ナマで2万5000円が目安とされる。取り締まりの影響で収入は減っているというが、それでも「中抜きがない」という点は大きい。 これに加え、客を自分の意思で品定めして選べるのだから、労働者としての主導権は圧倒的に女性側にある。いわば「エロス資本のフリーランス化」だ。 従来の性産業には、店舗あるいは事務所、スカウトといった中間業者が必要だった。だがいまや、SNSとスマホの普及によって、若い女性が自らのエロス資本を直接マネタイズできるようになった。「予定どおりの出勤や、マメに日記を更新するようなデスクワーク的な努力が苦手だから、ただ立っていればいいだけのハードルの低い立ちんぼに流れる」というのはかつての話だ。 彼女たちは決して怠惰だからではなく、自らの労働コストとリターンを天秤にかけた結果として「合理的な選択」をしている。昼職で月20万円を稼ぐために上司の理不尽に耐えるより、フリーランスとして路上に立つほうが「コスパがいい」と判断するのは、現代の労働市場の歪みがもたらした必然の帰結とも言える。
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コミュニティ経済と独自の経済秩序
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作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。編集者を経て、’02年に国際金融小説『マネーロンダリング』で作家デビュー。同年刊行の『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』がベストセラーとなり、以後、金融、投資、社会制度、人生設計などをテーマに幅広く執筆活動

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