3畳のゴミ屋敷でフェラガモを着る51歳男、寿町のファッションモンスター/國友公司
vol.04/ルポライター 國友公司
「俺、ファッションモンスターだから。ヨロシク」
日本三大ドヤ街のひとつである横浜の寿町で、僕は知らないおじさんにいきなり声をかけられた。そのいで立ちは、たしかに寿町らしからぬものだった。黒のブーツに黒のスキニーパンツ。フェラガモのトレンチコートの下にアルマーニのセーターを覗かせ、極めつきにモンスターエナジーのキャップをかぶっている。「kanji」と名乗る51歳の男はまさに「寿町のファッションモンスター」だったのだ。
「そんな高そうな服、どこで手に入れるんですか?」
kanjiは寿町に住む大多数の高齢者と同じく、生活保護を受給しながらドヤと呼ばれる簡易宿泊所に暮らしていた。
「大通り公園でたまにバザーがあるんだよ。あとはそのへんで拾ったりね」
後で知ることになるが、異常なまでの収集癖を持つkanji。このときすでに電子レンジを積んだソファチェアをフェラガモ姿で一生懸命に引きずっていた。
元週刊誌記者、現在フリーライター。日々街を徘徊しながら取材をしている。著書に『ルポ西成 七十八日間ドヤ街生活』(彩図社)。Twitter:@onkunion