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「命より収入を優先する患者たち」貧困にどう気づくか? 模索する医療現場の実態

 年収と健康には因果関係がある――近年、さまざまな研究によってそんな事実から明らかにされてきた。格差が広がる日本でも問題視され始めた「健康格差」が今、新型コロナの影響で深刻化している。残酷なまでに広がりだした“命の格差”の実態に追る。今回はコロナ禍で変化する「生活困窮者」の医療現場の実態だ。

「命より収入を優先に」患者の貧困にどう気づくか?

毎月1回、JR中野駅前で行っている「なんでも相談会」の様子

中野共立病院が毎月1回、JR中野駅前で行っている「なんでも相談会」の様子

 経済的理由で病院に行かず、その結果、死に至ってしまうほど日本の貧困は深刻だ。全日本民主医療機関連合会の久保田直生氏によれば、「収入が少なくても、生活保護を受けずになんとか耐えている人が最も危ない」という。 「生活保護を受ければ医療費は免除されます。しかし、実際には生活保護を受けられる水準の収入でも、世間体や差別を恐れて申請しない人がたくさんいます。持病があればその間にもどんどん病気は悪くなる。結果的に治療が遅れてしまい、病院に来たときには手遅れになっているケースが出てきてしまうのです」  また、民医連は’05年から同様の調査を毎年行っているが、「例年、多いのは中高年男性」だという。 「全体の7~8割が男性で、住居では借家やアパートでの一人暮らしの割合が目立ちます。やはり男性のほうが周囲から孤立しやすいという問題があるのではないかと。地域で孤立して、誰とも繋がりがなくなり、具合が悪くなっても我慢して……という傾向が強いのではないかと思います」  持病を抱えていても金銭的理由で通院をやめてしまい、周りには心配する人もいない……そんな姿が目に浮かぶ。そういった人に「毎週、きちんと病院に来て」と伝えても、難しいのは自明だろう。

生活の基盤にある問題

 そのため、昨今の医療現場では患者の病気を診察するだけでなく「生活の基盤にある問題も解決しないと根本的な治療に繋がらない」という意識が高まっている。医療従事者が集まる勉強会も各地で開かれ、そのなかでは患者が生活に苦しんでいるかどうかに気づくための“サイン”(記事末参照)なども話し合われているそうだ。 「患者さんから『経済的に苦しい』と言ってもらえればケースワーカーに繋げるなどできますが、問題はその前です。例えば小児科に来ても絶対に母子手帳を見せないお母さんがいて、聞いてみると小児ワクチンを受けるお金がなくて一度も子供がワクチンを打てていなかったりする。そういった患者さんに気づくために、スタッフを集めカンファレンスを行う病院も増えています。外来の医療事務や受付も参加して『今週、気になった患者さんは誰でしたか?』と話し合って、そういった意見交換から治療に繋がるケースもあります」
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増加する無料低額診療の患者
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