更新日:2023年09月04日 18:42
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株価も動く日銀のやっている「YCC」ってなに?元日銀副総裁がわかりやすく解説

日銀  投資で勝つためには、各国が実施する金融政策も理解しなければならない。現在、大規模な金融緩和を実施している日銀は2023年7月28日「長期金利の変動幅を0.5%程度を目途に」と発表。すると、日経平均株価は大きく乱高下した。これはYCCと呼ばれる政策の柔軟化を発表したわけだが、YCCが何かを知らなければ、株価も動きも読めないだろう。そこで、今回は元日銀副総裁の岩田規久男氏が「YCCって何?」をわかりやすく解説。植田日銀総裁がやろうとしていることを教えてくれた。

日銀がやっている「YCC」ってなんですか?

経済オンチの治し方

イラスト/岡田 丈

日本経済は1998年7月から’13年3月まで、年平均のインフレ率がマイナス0.3%のデフレになり、雇用が大きく悪化しました。これは国内総生産(GDP)に対する需要がその供給能力を下回る需要不足に陥ったからです。 そこで、日銀は2%のインフレ達成を目指して、’13年4月に「量的・質的金融緩和政策」を開始し、’16年9月からは「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」政策に変更しました。 この政策では、長期金利である10年物(満期が10年)国債金利が0%程度で推移するよう、長期国債の買い入れを行います。満期までの期間が短い順に国債の金利を結んだ線をイールドカーブというので、長短金利操作はイールドカーブ・コントロール(YCC)と呼ばれます。 ’13年以降、日銀は国債金利を下げるために国債を銀行から大量に購入してきました。YCCは10年物までの国債金利をさらに下げるために導入されたものなのです。 国債金利の低下は国債保有を不利にしますから、銀行は保有を減らす一方で、貸し出しを増やしたり、社債や株式への投資を増やしたりします。 これによって貸し出しと社債の金利が低下し、株価が上昇すると、借り入れ需要が高まり、企業が社債や株式の発行を増やす可能性も高まるのです。
東京大学大学院経済研究科博士課程退学。上智大学名誉教授、オーストラリア国立大学客員研究員などを経て、’13年に日本銀行副総裁に就任。’18年3月まで務め、日本のデフレ脱却に取り組んだ経済学の第一人者。経済の入門書や『「日本型格差社会」からの脱却』(光文社)、『自由な社会をつくる経済学』(読書人)など著書多数
東京大学大学院経済研究科博士課程退学。上智大学名誉教授、オーストラリア国立大学客員研究員などを経て、’13年に日本銀行副総裁に就任。’18年3月まで務め、日本のデフレ脱却に取り組んだ経済学の第一人者。経済の入門書や『「日本型格差社会」からの脱却』(光文社)、『自由な社会をつくる経済学』(読書人)など著書多数

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