鈴木エイト氏「それでも旧統一教会をやめられない二世信者たちの過酷な現実」

世間を震撼させた安倍元首相銃撃事件からもうすぐ2年。事件後は、旧統一教会の暗部が大々的に報道され、付随するように宗教二世問題が取り沙汰された。この機を逃すまいと、多くの当事者たちが、幼少期から受けた貧困や洗脳の被害を訴えてきた。   ‘23年10月に旧統一教会への解散命令が請求され、12月に被害者救済法が成立。‘24年4月には、こども家庭庁が、宗教二世への虐待を巡る実態調査結果を公表した。そうして世の中が少しずつ変わり始めるなか、宗教二世たちを取り巻く環境はどう変化したのか? 事件後、約2年の変化を追った。
ルポ[宗教二世のその後]

‘22年末、旧統一教会の解散命令請求を求め、鈴木氏や元信者らは、約20万人分の署名を文化庁に提出。翌年、解散命令請求が実現 (写真/時事通信社)

旧統一教会は「宗教二世」ではなく「カルトの二世」

15年前から宗教二世問題を扱ってきたジャーナリストの鈴木エイト氏に、宗教二世の現状を聞いた。 「これほど旧統一教会の反社会的な行為が報じられても、実態を知って脱会したという現役二世の話はあまり聞きません。逆に、世間や報道に反発して結束を強めているほどです」 宗教によって被害の実態も異なってくるが、旧統一教会の特徴は何なのか。 「一つは、貧困率の高さ。親が子供にかける費用を犠牲に教団に高額献金してしまう。もう一つは、自由恋愛の禁止。人間の自然な感情を抑圧され、精神を病んでしまうケースもあると聞く。また、両親が合同結婚式で結ばれた子供は『祝福二世』と呼ばれ、神の子として育てられるため、教団を否定すれば、自らの出生やアイデンティティにまで関わる。簡単には受け入れがたい事情があります」 成立した被害者救済法には疑念が残るという。