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「黒字なのにリストラ」する企業が急増中の理由。誰もに迫る“クビ”の恐怖

株高・物価高・賃金高が進むなかで、なぜかリストラが増えている。業績低迷企業はもとより、黒字企業でも“構造改革”の名のもとにクビ切りが行われているのだ。巧妙化するその手口を調査した。

リストラが急増している!?

[急増するリストラ]最新手口人手不足と言われているのに、リストラの嵐が吹き荒れている!? そんな不安を煽るようなリポートを今月発表したのは、信用調査会社大手の東京商工リサーチだった。 同社の集計によると、’24年に早期・希望退職募集を行った上場企業は前年比4割増の57社に上り、募集人員は同3倍に当たる1万人を超えたという。特筆すべきは、こうしたリストラ策を講じた企業の6割が直近黒字決算の企業である点だ。しっかり利益を出しているのに、クビ切りに勤しむ企業が増えているのはなぜか? 同社情報本部長の友田信男氏が話す。 「かつては赤字企業が経営改善の目的でリストラするのが一般的でしたが、近年は体力のあるうちに新たなビジネスに取り組むための構造改革を進めようとリストラする企業が増加しています。その走りは、黒字経営なのに’21年に40歳以上の希望者を早期退職させて“個人事業主化”した電通です。背景には、海外企業との競争激化に加え、株主の目もある。 ’23年に東証がPBR(株価純資産倍率)1倍割れ企業に是正を促したように、資本効率や利益率の低い企業は市場から排除される傾向にある。だから、企業業績が改善して、賃上げも着実に進んでいるさなかにリストラが急増しているのです」

10年以上リストラを続けるルネサス