仕事

昇給を目指さず、最低限の仕事だけする「静かな退職」という働き方のススメ

株高・物価高・賃金高が進むなかで、なぜかリストラが増えている。業績低迷企業はもとより、黒字企業でも“構造改革”の名のもとにクビ切りが行われているのだ。巧妙化するその手口を調査した。

ひそかに注目を集める「静かな退職」

[急増するリストラ]最新手口

経営コンサルタントの海老原嗣生氏

人手不足と人余りが共存し、通年リストラと採用が並行して行われる今、「静かな退職」がひそかに注目を集めているのをご存じだろうか? これは’22年に米国で使われだした「Quiet Quitting」を和訳したもの。“退職”と入るが、会社を辞めずに、最低限やるべき業務だけをやる消極的な働き方を指す。 この静かな退職が日本のいびつな雇用環境改善に役立つと説く人物がいる。リクルートエージェントで人事制度設計などに携わり、リクルートワークス研究所で『Works』の編集長を務めた人事のスペシャリスト、海老原嗣生氏だ。2月には『静かな退職という働き方』を上梓する。 「昔から、最低限やるべきことしかやらないという人はいましたが、ブラック企業撲滅運動やアンチパワハラなどが広がり、『厄介だけど認めざるをえない』という姿勢が企業に生まれ、それがさらに近年ポジティブに受け止められるようになってきました。現状、静かな退職を希望するのは『別に出世しなくてもいい』と考える20代に多いのですが、中高年にも浸透し、企業の考え方にも影響を及ぼすようになると、日本の雇用環境は大きく改善すると考えています」 その主張が意味するところは、年功序列型定期昇給の廃止と人材育成・採用コストの大幅縮小だ。

年功序列・定期昇給の撤廃で受け入れ進む?