更新日:2025年10月28日 18:17
エンタメ

原田泰造が“おっさん”になって良かったと思うこと「『しゃべくり007』の収録が早く終わったら、4人で1時間半くらい喋りながら歩いて…」

イケてるおっさんの正解――自由であること

お笑い芸人として第一線を走る原田泰造は。“おっさん”を演じさせたら右に出る者はいない俳優でもある。齢55にして「体が痛いし、すぐ疲れる」と、おっさんであることを日々痛感しながら、それでも自由に「人生を謳歌」するタイゾーの生き方に迫った。
エッジな人々

原田泰造

 何げに、と言っては失礼かもしれないが、立っているだけで雰囲気がある。お笑い芸人としての顔はもちろんのこと、俳優としての演技力も高く評価される原田泰造。昨年主演を務めた連続ドラマの劇場版『映画 おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!』が7月4日より公開中だ。凝り固まった価値観と偏見をアップデートさせていく“おっさん”会社員・誠を、リアルに演じた原田が、原田流の“おっさんたる自由”を語った。

朝起きてから夜寝るまで「おっさんになったな」って、ずーっと感じてる

──ドラマ版に続いて、映画でも銭湯で“おっパン”(おっさんのパンツ姿)を披露していました。原田さん自身はサウナーだけあって、堂々たるおっパン姿でかっこよかったです。 原田:ほんと? 誠は自分のなかで普通のおっさんだから、体が引き締まりすぎててもいけない、ある程度の肉もついてなきゃって思ってたんだけどね。 ──普段、「かっこよく年を重ねる」うえで意識していることはありますか? 原田:お酒をあまり飲まないから、そういう場所には行かないんだけど、気持ちとしては「モテたい!」と思ってる(笑)。

人間もスマホみたいに、更新されていかなきゃいけない

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©練馬ジム/LINEマンガ・2025 映画「おっパン」製作委員会

──大事ですね。さて、人気ドラマが映画になりました。昭和の価値観ガチガチだった誠は、ドラマ版で令和にアップデートされましたが、個人的に、誠に共感した部分は? 原田:演じながら「そうだよな」と思うところはたくさんありましたよ。誠と一緒に自分もアップデートしていった感覚。スマホでさ、毎晩のように「アップデートが何個あります」って出てくるでしょ。人間も、ああやって更新されていかなきゃいけないんだろうなと思う。それは若い世代に合わせるというのとはまた違って。 ──違う、というと。 原田:世の中の価値観自体が変わってきているからさ。たとえば僕が若い頃なんて、立ちションとかしてる人なんて普通にいたけど、今はいないよね。 ──たしかに。では合わせる合わせないではなく、若い世代に何か感じることは? 原田:今っていわゆる“生意気な若者”が少なくなったでしょ。尖った感じとかがない。 ──「オレが一番!」とか?
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©練馬ジム/LINEマンガ・2025 映画「おっパン」製作委員会

原田:若いときってそう思いがちなものじゃない。そこから削られていく。でも今は、最初から削られてる状態で社会に出てくる。だから怖くて、怖くて。 ──(笑)。悟り世代の次。 原田:そう、ニュータイプ。アムロ・レイが出てきている。今回の映画でも退職代行が登場するけど、誠はそれを最初から受け入れてるからね。逆にすごいよ。もう当たり前なんだなって。ただ、もし僕の時代に退職代行があったら、使いまくってたかもしれない。

過去の言動は、取り消せない

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©練馬ジム/LINEマンガ・2025 映画「おっパン」製作委員会

──誠はアップデートしてチェンジした人ですよね。でもそんな人にも、取り返せない過去はある。 原田:そうだと思うよ。いっぱいあると思う。 ──そんな中で、劇場版では、かつて誠のパワハラとも言える言動で退職した元部下と再会し、過去の過ちに苦しみます。 原田:そうなんだよね。これが今回の映画のテーマの一つだよね。謝っても、相手は嫌な気持ちになるかもしれないし「覚えていません」って言うかもしれない。でも、実際に相手の心の中はわからないじゃない。 ──そうですよね。
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©練馬ジム/LINEマンガ・2025 映画「おっパン」製作委員会

原田:逆にこっちは都合よく忘れてたりするからね。 ──過去とちゃんと向き合う誠は立派です。 原田:ほんと偉いと思う。うちの奥さんなんて、若いときのこともすごく覚えていて、いまだにその熱量で怒れるの。僕は忘れちゃってるんだけど。 ──女性のほうが事細かに覚えている人が多いと聞きますね。
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©練馬ジム/LINEマンガ・2025 映画「おっパン」製作委員会

原田:「このとき、このタイミングで、あなたはこう言ったよ!」みたいなことを、今の時代の価値観に照らして怒られてしまうときもある。今の世間の旦那さんはやっているのに、あの頃のあなたはやってこなかったみたいな感じで怒られたりして。 ──それはなかなかツラい。 原田:たとえば「ハワイの夜景っていいよね」って言ったら、「昔ハワイの夜景を見に行く前にあったあの事件!」と繋げてきたりするの。そういうときはやっぱり、申し訳なかったなと思う。

おっさんは365日、朝から晩まで“痛い”

──今回、「おっさん」代表として主演を務めていますが、原田さん自身、自分がおっさん化しているなと自覚する瞬間はどんなときですか? 原田:朝起きた瞬間にわかる。「こんなに年取ったか」みたいなのは、朝起きた瞬間から夜寝るまで、ずーっと感じてる。 ──起きた瞬間から(苦笑)。 原田:365日、体調いい日なんて一日もない。びっくりするよ。でもしょうがない。自分の体だから。やっていくしかない。僕ね、“自分がどれだけ老いてるかトーク”が大好きなの。他の人から聞くのも好きだし、自分が言うのも大好き。 ──(笑)。では、おっさんはいとおしいですか? エッジな人々原田:いとおしくないよ、こんなの(笑)。もしも若返りの薬が目の前にあったら、すぐに飲むよ。だって、痛えんだもん、体。 ──つまり老化で一番しんどいのは……? 原田:体が痛いところだよね。すぐ疲れちゃうとか。でもさ、おっさんって、肩身が狭いようでいて、実は自由な生き物だから。なんでもできるんだよ、体さえ痛くなかったら。 ──悪い面があれば、いい面もある、と。 原田:なんでもありじゃない? おっさんって。どこにでも行けるし、どこにいても平気でしょ。電車で女性専用車両のところにいたらダメだけど、そういうところ以外はどこにだって行けるし、最強だと思う。僕、子供の頃から「おじさん」になりたかったんだよね。なんていうか、大人になりたかった。 ──そうなんですね。実際になってみていかがですか? 原田:よかったよ。今、すごく生きやすい。 ──おっさんになってみて、抱いている誇りはありますか? 原田:誇り? 誇りなんてものは何もないけど。でも昔、憧れていた部分は、実際にいろんなことができてるし。50歳手前でバイクの免許を取ってみたりさ。全部自由だから、なんか夏休みみたい。 ──夏休みですか。 原田:うん。『しゃべくり007』の収録が早く終わったら、4人で1時間半くらい喋りながら歩いて、サウナまで行ったりしてさ。楽しいよ。

ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画周辺のインタビュー取材を軸に、テレビドラマや芝居など、エンタメ系の記事を雑誌やWEBに執筆している。親類縁者で唯一の映画好きとして育った突然変異。X(旧Twitter):@mochi_fumi