更新日:2026年01月05日 17:16
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『かんぴょう巻』弁当…寿司の歴史の荒波を生き残ったほっとする味わい<人生最後に食べたい弁当は?>/久住昌之

『孤独のグルメ』原作者で、弁当大好きな久住昌之が「人生最後に食べたい弁当」を追い求めるグルメエッセイ。今回『孤独のファイナル弁当』として取り上げるのはスーパーで目に留まった『かんぴょう巻(6巻)』。しみじみした佇まいの伝統的巻き寿司を、自宅で食べてみることに。果たして、お味はいかに?
孤独のファイナル弁当「かんぴょう巻」

「かんぴょう巻(6巻)」

孤独のファイナル弁当 vol.07 「かんぴょう巻(6巻)」

 スーパーで弁当コーナーを見ていて、これに目が留まった。「かんぴょう巻(6巻)」158円。これがボクの人生最後の弁当だったら。ちょっと笑った。  小さい。かなり地味。ファイナル弁当がこれ。ドラムロールがザーッと鳴って、シンバルのジャーン、カーテンが上がったら、スポットの当たったワゴンの上にこれ。  いや、いいじゃないか。俺らしいかもしれない。というか、この弁当を嘲笑する男にはなりたくない。すでにちょっと笑ったが。「えー、これかよぉ、ウソでしょ、勘弁してよぉ」とだんだんマジギレするような男には死んでもなりたくない。ならねぇよ!  よし、と思ってむんずとこれを掴んで、カゴにも入れずレジに向かった。家に帰って、テーブルの上に置いた。確かに小さい。一食には足りない。はなやかさゼロ。  開いたら醤油がついている。生姜はない。しみじみ見る。実にしみじみした佇まいだ。  でもやっぱり寿司だ。日本の伝統的巻き寿司。韓国のキンパとは違う静けさ、奥ゆかしさ、端正さがある。クソ真面目。目立つことを嫌い、着飾ることを避け、理屈を厭い大声をあげない。

1958年、東京都出身。漫画家・音楽家。代表作に『孤独のグルメ』(作画・谷口ジロー)、『花のズボラ飯』(作画・水沢悦子)など。Xアカウント:@qusumi