「退職は健康長寿に繋がる」世界10万人調査で判明。日本の職場環境は“最も健康を害する”タイプ
世代を問わずに働き方が多様化する昨今、積極的に「無職」という生き方を選び、ストレスフリーな生活を送る人が増えている。「仕事に縛られず、もっと自由に生きたい」そんな心の声を受け入れた先には、どんな暮らしが待っているのか――。
仕事のストレスによる精神疾患の労災認定件数は’24年に過去最高を記録。心身の健康リスクが高い環境で働く会社員は多いが、今年6月に「退職は健康に良い影響を与える」という驚きの研究結果を発表したのが、早稲田大学と慶應大学の共同研究チームだ。論文著者の一人である慶應大学専任講師の佐藤豪竜氏がその理由について解説する。
「退職すると健康に好影響が出るのは、ストレスホルモンと呼ばれるコルチゾールの分泌が低下することで、高血圧や糖尿病などの生活習慣病リスクが軽減されるからです。また、一日のうちで自由に使える可処分時間が増えるので、それを健康への投資に振り分ければ、運動不足の解消や認知機能の向上にも繫がります。今回の研究では世界35か国における50~70歳の10万人を対象に調査しましたが、地域や所得水準にかかわらずに一貫した結果が出ました」
バリバリ働いていた人は会社を辞めることでアイデンティティクライシスを起こすという論調もあるが、実際のところは心身に好影響を及ぼすのは万国共通のようだ。佐藤氏曰く「日本の職場は特にストレスがかかりやすい環境」だと指摘する。
「スウェーデン人の社会学者・カラセック氏によると、ストレス度合いは『仕事の要求度』と『仕事のコントロール度』を掛け合わせた4つに分類されます。最も健康を害するのは、タスクの要求度が高くて、裁量が少なく、上司から言われるがままに働き続ける環境です。これはまさに日本の職場の典型ですよね。反対に、主体的にやりたいことを見つけて、自身で労働時間を決められる働き方だと健康長寿に繫がるとも言えます」
「退職は健康に良い影響を与える」

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