更新日:2026年04月14日 16:45
ライフ

ロウリュを初体験!閉店直前の『カプセルイン蒲田』で起きたサウナ室の優しい問題(前編)/カツセマサヒコ

ただ東京で生まれたというだけで何かを期待されるか、どこかを軽蔑されてきた気がする――。そんな小説家カツセマサヒコが“アウェイな東京”に馴染むべくさまざまな店を訪ねては狼狽える冒険エッセイ。サウナが苦手な著者が訪れたのは蒲田駅にある『カプセルイン蒲田』。2025年10月閉店直前に訪れた老舗店での願いは、今日も「すこしドラマになってくれ」

ロウリュ☆レポート【蒲田駅・カプセルイン蒲田(前編)】vol.23

 サウナに苦手意識がある。オラオラした男たちによる我慢くらべ大会に見える。  とくに交互浴という、灼熱のサウナと極寒の水風呂を行き来するライトな自殺行為みたいな入浴方法に疑問がある。  友人に誘われて試したことがあるが、明確に寿命が縮む感覚があり、こんなのは絶対にダメ!と思った横で友人は「ととのったァ」などと言っていたことから、臨死体験がクセになっている人の戯れごとと思うようになった。 「大田区にもうすぐ閉店してしまうカプセルホテルがあるんです。サウナも付いているので、よかったら行ってみてください」  担当編集が寂しげに言った。9月の初旬のことだった。  狭くて周りのイビキがうるさいと聞くカプセルホテル宿泊に、苦手なサウナまで付いてくる。大人のアンハッピーセットである。  平日夕方、蒲田駅から歩いてすぐのところにある「カプセルイン蒲田」にチェックインした。受付が想像よりずっと広く、少し古めのスーパー銭湯のような懐かしい空気がある。  指定されたカプセルに向かい、備え付けのロッカーで館内着に着替えると、早速サウナ付きの大浴場「ガーデンサウナ蒲田」に向かう。数年ぶりの臨死、違った、サウナ体験の幕開けである。 「とくに最近は、ロウリュが流行っています。よければ経験してみてください」  シャワーで体を洗い終えたあと、担当編集の言葉を思い出し、ロウリュなるものが体験できるサウナルームに入室した。モワァッと届く熱気に包まれ、早くも苦しい。室内にはキン肉マンに出てきそうなマッチョな男性と、学生と思われるシュッとした兄ちゃん2人組がいた。平日だし空いているな、と思ったが、私が座った途端、男たちがオラオラと現れて、総勢10人の裸の集団があっという間に完成した。まさか新手のフラッシュモブ!? 不審に思いながら壁に書かれたお知らせを読むと、「ロウリュは15分おきでです」と書かれている。  なーんだ、ロウリュしていい時間が近づいてきたから、みんな集まってきたのか。ところでロウリュって何?と続きを読むと、熱された石に水をかけて、その蒸気で室内の温度をさらに上げる必殺技のようなものらしい。みんな、そんなに早く死にたい?

1986年、東京都生まれ。小説家。『明け方の若者たち』(幻冬舎)でデビュー。そのほか著書に『夜行秘密』(双葉社)、『ブルーマリッジ』(新潮社)、『わたしたちは、海』(光文社)などがある。好きなチェーン店は「味の民芸」「てんや」「珈琲館」