更新日:2025年12月04日 16:56
ニュース

札幌家裁が「手術なしでの性別変更」を認める。元裁判官が語る、故・大島俊之氏の功績

 性同一性障害の当事者が戸籍上の性別変更を求めた審判で、札幌家裁は10月、手術なしでの性別変更を認めた。現行法が求める「外観要件」を憲法違反と判断したもので、法律の生みの親である故・大島俊之氏の理想がようやく実現に向かっている。 “白ブリーフ判事”こと元裁判官の岡口基一氏は、この「性別変更で手術要件を違憲判断」について独自の見解を述べる(以下、岡口氏の寄稿)。 その判決に異議あり! 岡口基一

手術の「強制」は人権侵害だ!法律家が社会を動かした勝利

 性同一性障害の当事者が戸籍上の性別を変更するためには、現在の法律(性別変更特例法)では2つの手術をしなければならない。例えば、男性が女性になるには、生殖不能になるために精巣を切除し、さらに、性器の外観が女性に見えるよう陰茎を切除しなければならない。  しかし、自らの本来の性に戻るために手術を強いられるのは問題だ。手術を望まない当事者もいるし、手術ミスは身体・生命の危険をもたらしかねない。憲法13条は国民に幸福を追求する権利を認めているが、性別変更特例法のこの手術要件は、この権利を侵害するものではないか。  ’23年に最高裁大法廷は、生殖不能要件について憲法13条違反との判断を下した。この判決を勝ち取った申立人代理人弁護士は、「ゲイ夫夫弁護士」として知られる南和行弁護士と吉田昌史弁護士である。  しかし、まだ外観要件が残っていた。札幌家裁は今回取り上げた事件で、外観要件についても憲法13条違反とし、何の手術もしていない当事者の性別変更を認めた。同様の判断が全国の家裁でなされており、これで5件目となる。  この結論を一番喜んでいるのが、故・大島俊之教授(後に弁護士)だろう。’03年の性別変更特例法の制定のために奔走した、この法律の生みの親である。  自分が生みの親となった法律が憲法違反だと指摘されたのだから、気分を害しているのではないかと読者は思われるかもしれない。しかし大島教授も、本当はこんな手術要件を入れたくなかっただろう。

性別変更後の公衆浴場、スポーツ競技


おかぐち・きいち◎元裁判官 1966年生まれ、東大法学部卒。1991年に司法試験合格。大阪・東京・仙台高裁などで判事を務める。旧Twitterを通じて実名で情報発信を続けていたが、「これからも、エ ロ エ ロ ツイートがんばるね」といった発言や上半身裸に白ブリーフ一丁の自身の画像を投稿し物議を醸す。その後、あるツイートを巡って弾劾裁判にかけられ、制度開始以来8人目の罷免となった。著書『要件事実マニュアル』は法曹界のロングセラー