更新日:2025年12月04日 16:57
ニュース

トランスジェンダー手術要件“憲法違反”判決が確定したワケ。「家裁判事が王様になれる」特殊な裁判の実態

 トランスジェンダーの性別変更を巡って、手術を必須とする現行の性同一性障害特例法の規定について、札幌家庭裁判所は9月、これを憲法第13条で保証している「幸福追求権」の侵害にあたると判断。手術なしでの性別変更を認める画期的な決定を下した。  “白ブリーフ判事”こと元裁判官の岡口基一氏は、「札幌家裁、性別変更手術要件違憲判決」について独自の見解を述べる(以下、岡口氏の寄稿)。 その判決に異議あり!岡口基一

家裁判事は「王様」になれる? 相手方不在の裁判が映す正義

 トランスジェンダーの方が性別変更するには、「手術」が必須条件であると性同一性障害特例法には定められている。9月に出された札幌家庭裁判所の判断は、これを幸福追求権の侵害とし、憲法違反であると断じた。  前回、本欄で取り上げたこの判決を、今回は裁判官の視点から見てみたい。  まず注目したいのは、LGBT界を揺るがすこの重大な決定が、どうして高裁や最高裁に進むことなく家裁の審理のみで確定してしまったのかという点だ。実はこれ、不服申し立てをする者が誰もいない裁判だったからに他ならない。  そもそも今回の裁判には、性別変更を申し立てた「申立人」と「裁判官」の2者しか関与していなかった。つまり、「相手方」が不在の裁判であるため、申し立てが認められればそこで裁判は終了するというわけだ。  こういった形式の裁判では担当裁判官は「王様」になれる。憲法違反という重大な判断も自由にできるし、申し立てを認める決定をすれば自動的にそのまま裁判は確定する。それが重大な判決であれば、マスコミでも大々的に報道され、他の裁判官にも影響を与えることになるのだ。

おかぐち・きいち◎元裁判官 1966年生まれ、東大法学部卒。1991年に司法試験合格。大阪・東京・仙台高裁などで判事を務める。旧Twitterを通じて実名で情報発信を続けていたが、「これからも、エ ロ エ ロ ツイートがんばるね」といった発言や上半身裸に白ブリーフ一丁の自身の画像を投稿し物議を醸す。その後、あるツイートを巡って弾劾裁判にかけられ、制度開始以来8人目の罷免となった。著書『要件事実マニュアル』は法曹界のロングセラー