更新日:2026年05月08日 16:52
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『孤独のグルメ』原作者が食べた天むすび弁当、問題は中身がわからないロシアンルーレット<人生最後に食べたい弁当は?/久住昌之>

『孤独のグルメ』原作者で、弁当大好きな久住昌之が「人生最後に食べたい弁当」を追い求めるグルメエッセイ。今回『孤独のファイナル弁当』として取り上げるのは天むすび弁当。果たして、お味はいかに?
北九州黒崎の天むすび弁当の中身

「北九州黒崎の天むすび弁当の中身」

孤独のファイナル弁当 vol.22 「北九州黒崎の天むすび弁当の中身」

 九州市の黒崎に取材と講演の仕事で行った。会場の黒崎ひびしんホールの楽屋で出たのが「音羽屋の天むすび弁当」。音羽屋は地元で40年ほど愛されてきた天むすび専門店ということだ。  天むすというと名古屋だが、ここの天むすびはそれと似ていて少し違う。  小さなおにぎりの中に海老の天ぷらが入っているのは同じだが、海老の尻尾はごはんから飛び出していない。  そして一個がもっと小さく、ほぼ一口サイズ。そのごはんを細い海苔2枚で巻いているのがユニークだ。それが8個、卵焼きや白身フライといったおかずとともに入っている。  ところが問題は、中身が海老天だけではない、というところだ。しかも外からそれはわからない。死なないロシアンルーレット。  だけど一個にわさびや唐辛子の塊が入っていたらどうしよう。あるいはごはんと全然合わない生クリームとかいちごジャムとか蜂の子とか。  これが一生の最後の弁当だったらどうだろう。  そのゲームを楽しむ余裕はあるか? むしろ頭にくるんじゃないか? 「人の今際の際の飯で遊ぶな!」って。  まずは端の一個を恐る恐るつまみ出して半分齧ってみた。……なんだこれ? いきなり海老じゃないものが出てきた。天ぷらではある。なんだこれ? 小さくて味がよくわからない。じーっと見つめたが、白い軟らかいものの正体がわからない。そのまま残りを口に入れて咀嚼した。あ、イカのようだ。イカ天。いかすバンド天国。古い。出てた友達還暦。  お茶を飲んでもう一個。お、海老。おいしい。いや、イカもわかったらおいしかったのだが。わからないと少し不安。

1958年、東京都出身。漫画家・音楽家。代表作に『孤独のグルメ』(作画・谷口ジロー)、『花のズボラ飯』(作画・水沢悦子)など。Xアカウント:@qusumi