雑学

歌舞伎町でスポーツジムの深夜営業を8年。経営者が語る「この町の変化」

歌舞伎町にある新宿スポーツジム

歌舞伎町にある新宿スポーツジムの外観

 今年、新宿・歌舞伎町は大きく変わった。旧コマ劇跡地に大規模商業ビル「新宿東宝ビル」がオープンし、外国人観光客が目立つようになった。昔ながらの店は鳴りを潜め、コンビニやカラオケ、チェーン店が増えた。

 魅力的だけど、ちょっと怖い大人の街――。そんな印象だった歌舞伎町は今、居酒屋のキャッチばかりが目立つ、若者や観光客の街に姿を変えようとしている。

 そんな歌舞伎町の目抜き通りである区役所通りの裏に、都内でも珍しい営業形態の格闘技ジムがあるのをご存知だろうか。キックボクシングジム「新宿スポーツジム」である。

 もっとも特徴的なのは、その営業時間。平日は19時~朝6時までと、深夜営業がメーンのジムなのだ。

 歌舞伎町で深夜営業の格闘技ジム。これらの単語だけ聞けば、「いかにも怖そうな人が多そうだ」と感じてしまう読者もいるかもしれない。実はSPA!も、新宿スポーツジムに「ヤクザ関係者が出入りしている」という間違った情報に基づいて記事を書いてしまったことがあり、大変なご迷惑をおかけしてしまった。この件に関しては新宿スポーツジムさんに改めてお詫びいたします。

新宿スポーツジムの経営者、RIKIYA氏

新宿スポーツジムの経営者、RIKIYA氏

 しかし実際には、プロ志望の人だけでなく、エクササイズやダイエットが目的の会員も多い。年齢層も20代から60代と幅広く、さまざまな職業の人で賑わっている。残業が多いサラリーマン、時間が不規則なIT系や芸能・マスコミ系やサービス業といった人たちにも好評なのだ。

 同ジム代表のRIKIYAさんはもともと、ヘビーメタル系バンドのベーシストとして活動するかたわら、歌舞伎町で飲食店を10年ほど経営していた。正道会館でK-1やプロの選手たちと練習してアマチュア選手として試合に出場したりしていた経験もあり、8年ほど前に区役所通り沿いの別の場所にキックボクシングジムをオープン。そして6年半ほど前、現在の場所に移転した。

 なぜ、深夜営業を行っているのか。その理由はジムを始めたきっかけにあるという。

「自分が格闘技をやっていたから、飲食店時代には格闘技の選手や格闘技が好きなお客さんがけっこういたんです。そういう人たちから、『深夜営業のジムがあればうれしい』という要望があった。歌舞伎町には仕事が終わるのが遅い時間の人たちがたくさんいる。そこにニーズがあると思い、深夜営業のジムを始めることにしたんです」

 また、新宿スポーツジムは「刺青・タトゥーあり」でも入会できる。近年は山本KID徳郁をはじめ、プロ格闘家にも刺青・タトゥーを入れている人が多い。しかし、実は格闘技系のジムであっても、刺青・タトゥーは厳禁としているところも多いのだという。

新宿スポーツジムの内部

新宿スポーツジムの内部

「刺青・タトゥーありをOKにしたのも、飲食店時代のお客さんからの要望でした。最近はファッション感覚で入れている人のほうが多いし、『刺青・タトゥー=暴力団関係者』のようなイメージは時代遅れだと思う。スポンサーの関係もあるんでしょうがね。実際にこうしたルールを作ったからといってジムに暴力団関係者が来たこともないし、『なんで入会できないんだよ』とモメたこともないですね」

 暴力団への利益供与を禁じる「暴力団排除条例」(暴排条例)が全国の地方自治体で施行されてから3年が過ぎたが、歌舞伎町という場所でジムを経営しているからこそ、条例に抵触しないための対策もしっかり行っている。

「うちは会員が100人弱の小さなジムですが、入会案内・入会申込書にもきちんと『暴力団関係者お断り』と明記しています(画像参照)。会費の支払いをクレジットカードでしている人も多く、そういった人たちはクレジットカード会社の審査が厳しいから、まず暴力団関係者である可能性は薄い。世間の一般的なジムと同じ水準の対策は行っているんです」

新宿スポーツジムの入会案内

新宿スポーツジムの入会案内には、「暴力団排除条例施行に伴い、暴力団の入会はお断りしています」との一文が明記されている

 さらに前述したように、同ジムは都内でも珍しい深夜営業を行っているため、テレビなどメディアの取材も多いことでも知られている。

「テレビ番組はコンプライアンスが厳しいから、取材前にしっかりとリサーチをするんですね。万が一、経営者やスタッフに限らず、会員に暴力団関係者がいれば放送はできない。うちのジムに限らず、テレビ番組に名前を出して放送されているようなジムは、まず大丈夫だと判断していいと思います」

 歌舞伎町の光景が変わった理由のひとつに、この暴排条例の影響がある。2015年版の「警察白書」によると、全国の暴力団構成員と準構成員の数は約5万3500人。1992年の暴力団対策法の施行後で最少になった。施行当時は約9万人が確認されていたので、およそ4割も減少したことになる。

 歌舞伎町の移り変わりを肌で感じてきたRIKIYAさんから見ても、やはり暴力団関係者は減りつつあるという印象なのか。

「どうでしょうか。昔のキャバクラやスナックは『みかじめ料』みたいなものを支払っていたところもあったかもしれませんが、私は飲食店時代も暴力団関係の人からそういった要求を受けたことがありませんでしたからね。ただ、最近は路上での職質も減って、治安が良くなってきたことは確かだと思います。いかにもヤクザっぽい人を見ることも少なくなりました。これだけ暴排条例が浸透したら、ヤクザの人たちも続けていくメリットがないと思っているのでは」

 RIKIYAさんが働いてきた20年の間に、歌舞伎町はすっかり変わった。大人の街から観光客の街へ変化を遂げつつあることに、寂しさは感じないのか?

「歌舞伎町は歓楽街だからこそ、時代の変化を受けやすい。むしろ、街に来る人たちの要望を受けて変わっていかないといけないと思うんです。うちのジムもどんどん一般的というか、がっつりキックボクシングをやりたい人より、ダイエットが目的というライトなお客さんのほうが多くなっています。
それは時代の流れだから、NOを言っても仕方ない。ジム経営としても、心理学やダイエット検定の資格をとったり、通信制大学で体育や心理、英会話を学んで、ニーズの変化に対応しています。まあ、実は勉強したりするのも好きで、しょうがなくというより学校やセミナーに行ったり資格を取るのも趣味だったりするんですが(笑)。
 それに自分自身はこの街から出て行くつもりはありません。ずっと歌舞伎町でやっているからこそ、飲食店時代のお客さんが未だに通ってくれるなんてこともあるし、街に愛着もある。これからも歌舞伎町でジムをやり続けるつもりです」

<店舗データ>
ダイエット&フィットネス&格闘技「新宿スポーツジム」
住所:東京都新宿区歌舞伎町2-2-10地下
営業時間:月曜~金曜=19時~朝6時、土曜=19時~23時30分
休館日:日曜
URL:http://ameblo.jp/shinjuku-kickboxing/

取材・文/日刊SPA!取材班

ハッシュタグ




おすすめ記事