恋愛工学・藤沢数希「今までの文学は本当の恋愛を描いていなかった」

”ぼく愛”で200%の本当の恋愛小説を描いたという藤沢数希さん

 お笑いコンビ「ピース」の又吉直樹さんの小説『火花』が芥川賞を受賞し、いま世間では「文学」に注目が集まっている。そんななか、同じく日本文学のある本でも熱い“火花”を散らす議論が展開されている。藤沢数希さんの『ぼくは愛を証明しようと思う。』だ。

 藤沢さんは外資系投資銀行でトレーディング業務などに従事した後、作家、投資家として独立。日本最大級の購読者数を有するメルマガ「週刊金融日記」を運営しており、メルマガ読者たちによって秘密の恋愛研究コミュニティが作り出された。そこでは、「恋愛工学」と呼ばれる、金融工学や心理学などを恋愛に応用した秘密の恋愛テクノロジーが研究され、毎週、ユーザーたちが熱い議論をかわしている。今回の小説には、この恋愛工学の研究成果がふんだんに取り入れられているという。

――渡辺正樹、27歳、弁理士。誠実でまじめなことが取り柄だが、恋愛ではいつも失敗ばかり。そんな彼が、ひょんなことから「恋愛工学」のマスターに出会う。そして、恋愛工学を身につけながら、数多くのAクラス、そして、Sクラス美女を落としていく――。

 日本最大の電子書店アマゾンで、一時は芥川賞『火花』を抜いて『日本文学』ジャンル1位を獲得。発売直後からたちまち話題となり、ツイッターやアマゾンのレビューでは賛否両論が繰り広げられてきた。

「文学もそうですし、ドラマや映画などを含めても、これまでの恋愛に関する作品は本当の恋愛を描いていなかったのではないでしょうか。恋愛がメインテーマでない作品にも、ほとんど必ずと言っていいほどサイドストーリーに恋愛が入りますが、そこでは『非モテコミット』があたかも素晴らしいことのように描かれる。普通の恋愛を効率よく行う、実用的な役立つ恋愛小説がなかったんです」(藤沢数希さん)

 藤沢さんは、「これまでのラブストーリーは、リアリティもないし、これから恋愛をがんばろうという青少年に、むしろ有害な内容ばかりだった」と指摘する。

「だって、恋愛小説を書いてるような作家は、たくさんの人と恋愛をしていないし、ちゃんと恋愛市場のリサーチもしていないのだから、本当の恋愛なんて描けるわけがないんですよね。恋愛がメインになる小説は、自殺とか難病とか、あとはSMなどの特殊性癖とか、ほとんどの人が経験しない異常な愛を描いているものばかり。どれも、空想で描いてるだけですよ。あと、片思いのもどかしい気持ちとかを200ページも描いたり、そんなもん知らんがな。早く次行けよ、と思いますよ。だから、僕はメインストーリーは恋愛工学を軸にした恋愛、サイドストーリーはひとりの女と向き合う純愛、という200%の本当の恋愛小説を作りたかったんです」(藤沢さん)

 それでは、藤沢さんの恋愛小説は、これまでの小説とは何が違うのだろうか。

「恋愛ドラマやJ-POPの歌詞、女の恋愛コラムニストがご丁寧にも『これが“正しい”恋愛ですよ』『こうしたら女の子にモテるんですよ』と暗に明に指南してくれる、恋愛に関する常識は根本的に間違っているんですよ。恋愛工学という科学的なアプローチとメルマガに集まったビッグデータを使って、世の中に蔓延している恋愛観を全部ひっくり返したかったんです」(藤沢さん)

 藤沢さんが本当の恋愛を描いたという“ぼく愛”の中には、「スタティスティカル・アービトラージ戦略」「ACSモデル」といった工学的な用語もあれば、「CTスポット」「トモダチンコ(TC)」「セックストリガー理論」など、ユニークなネーミングの恋愛工学用語も登場し、これらが賛否を巻き起こす要因ともなっている。

――「ディナーで仕掛けたイエスセットがうまくいきました。家に誘ったらあっさりイエス。あとはいつものようにフェーズシフトしました」

「週末にカフェで会ってCフェーズをクリア。その後はDVDルーティーンで難なく家に連れ込めました」

「昨日の夜に一言メッセージを送ったら、僕のところにすっ飛んできましたよ。完全にセックストリガーが引かれていますね」

「東京はでっかい無料のソープランドみたいなもの」――


 世の女性を敵に回すような数々の表現が出てくる“ぼく愛”。『火花』ともまた違う、本当の“文学”がここにある。 <取材・文・撮影/日刊SPA!取材班>

ぼくは愛を証明しようと思う。

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