2025年6月に起きたイスラエル・イラン紛争は世界に緊張を与えた。その後、アメリカがイランの核施設を攻撃し、停戦にこぎつけている。「12日間戦争」と呼ばれる舞台ウラでは何が行われていたのか。トランプ米国大統領は政治家として「見事、戦争を外交手段としてやってのけた」と言える。トランプ米国大統領のこうした行動からも、日本のリーダーに求めるものが見てとれる。果たして石破茂首相はトランプ大統領に認められるのか。憲政史研究家の倉山満氏がイラン・イスラエル紛争からひも解く。(以下、倉山満氏による寄稿)。
トランプは「戦争は外交の手段である」を見事にやってのけた

6月21日、イラン核施設への攻撃についてホワイトハウスで演説したトランプ大統領は、23日に「完全かつ全面的な停戦が完全に合意された」と自身のSNSに投稿した 写真/EPA=時事
プロイセンの軍人で『戦争論』を記したカレル・フォン・クラウゼヴィッツは「戦争は外交の手段である」との有名な言葉を残した。武力の行使はある政治的目的を達成するための手段であり、殺戮そのものが目的であってはならない。戦争は外交の延長なのだから、目的を限定して、達成したら無益な武力の行使は必要ないと説いた。
この逆が、ベトナム戦争。アメリカは血みどろの抗争に引きずり込まれ、何の為に戦っているのかわからないまま、敗北に追い込まれた。これに懲りて、アメリカは戦後にクラウゼヴィッツのテーゼを取り入れた(導入当時の国防長官の名をとってワインバーガードクトリンと呼ぶ)。
今回、ドナルド・トランプ米国大統領はイスラエルとともにイランを攻撃し、「12日間戦争」で見事にやってのけた。大したものだ。
一部にイスラエルが空爆を開始し、イランが反撃、アメリカが介入すると、「トランプは狂った」「中東大戦だ」「いや、第三次世界大戦の危険がある」と大騒ぎした向きがあったが、何を見て言っていたのか。
「イスラエルは国際法違反」空気を読めないでは済まない
トランプ自らが「12日間戦争」と名付けた、この戦いを振り返る。時間が少し経っているから、わかってくる事実もあるので。
そもそも中東では、ユダヤ教徒の国であるイスラエルは、周辺のイスラム教国と角逐を繰り返している。特にイランは、イスラエルの存在を認めず、「抹殺する」と宣言している。
そんなイランが核開発を進めているとの疑惑は絶えなかった。そこで親イスラエルで知られるトランプは、イランに核開発をやめるよう交渉していたが、イランはのらりくらり。
これに業を煮やしたトランプが、「やめないとイスラエルがイランを攻撃するぞ」と警告。この時点でイスラエルは、自己の生存を守る為に、イランへの攻撃をトランプに通達していたらしい。
ちなみに、とあるマヌケな極東の国の首相が「先制攻撃をしたイスラエルは国際法違反」と非難したが、空気を読めないでは済まない。国際法では、「挑発もされないのに先制武力攻撃をした」場合を侵略(正確には侵攻)と呼ぶ。日ごろから自分を抹殺すると宣言している相手が、自分を抹殺できる兵器の保有を進めているのに、座して死を待つことを国際法は求めない。サミットでもイスラエルの立場に理解が示された。
トランプとしては、イスラエルを猟犬としてイランにけしかけた格好だ。イスラエルも望むところ。
ジリ貧のイランを揺さぶるトランプの言動
皇室史家。憲政史研究家。1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「
倉山塾」塾長、ネット放送局「
チャンネルくらら」などを主宰。著書に『
13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「
嘘だらけシリーズ」の最新作『
噓だらけの日本近世史』が2月28日より発売