更新日:2025年10月03日 11:47
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「狂気」は弱点ではない!ロシア・ウクライナ和平交渉に向けたトランプ外交戦略の真意/倉山満

 国際政治において「狂気」は時に強力な武器となる。トランプ米大統領はその強みを巧みに使いながら、地球規模の盤面で緻密な外交戦略を展開する。8月、トランプ米大統領とプーチン露大統領の会談は世界に衝撃を与え、プーチン氏に「トランプ大統領の登場でトンネルの先に光が見え始めた」といわしめた。しかし、トランプ米大統領の外交で特に注目すべきは、ロシア・ウクライナ和平に向けた布石として、中央アジアのアゼルバイジャンとアルメニアの仲裁に成功したことだ。憲政史研究家の倉山満氏がトランプの外交戦略の真意と、その背景にある現実主義的な国際政治観を読み解く。(以下、憲政史研究家・倉山満氏による寄稿)
トランプ米大統領 プーチン露大統領

8月8日、旧ソビエト連邦構成国であるアルメニアとアゼルバイジャンの和平協定署名を仲介した後、15日にプーチン露大統領を迎え、会談に臨んだトランプ米大統領 写真/EPA=時事

「狂っていると思われること」は弱点ではない

 ドナルド・トランプ米国大統領、とかく評判が悪い。そもそも「頭がおかしい人」と扱われ、世界各国で行っている和平交渉も「ノーベル賞が欲しいだけだろ」と揶揄される。  確かに、大統領一期目末期に、熱狂的な支持者が国会議事堂に乱入、それを煽動するような言動を行った。確かにトンデモない人物だ。しかし、人間の評価に百点も零点もない。時に大きなマイナスがあったとしても、大きなプラスを否定できることにはならない。  そもそもの前提である。国際政治において「狂っていると思われること」は、決して弱点ではない。時に強力な武器となる。たとえば金正日である。アメリカに逆らった数多の独裁者が非業の死を遂げる中、独裁者としてベッドの上で死ねた。「こいつは本当に核兵器を撃つかもしれない」と思わせる一点を武器に。  ではトランプはどうか。言葉は人を騙す。特に色眼鏡で言葉を読み解く人は、勝手に騙される。しかし、行動は嘘をつかない。本誌7月22日発売号でも詳述したが、イスラエルとイランの十二日間戦争に関するトランプの手腕は見事だった。トランプは「戦争設計」ができる。つまり紛争に関して、最終的な落としどころを決めておいて、慎重かつ計画的に事を運べる。しかも、ああ見えて粘り強い。そして大局観がある。

会う前に布石を打っていたトランプ


皇室史家。憲政史研究家。1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『噓だらけの日本近世史』が2月28日より発売

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通説を覆す「嘘だらけ」シリーズ日本史編、待望の第三弾。