更新日:2025年10月28日 18:10
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「月23万円の生活費を止めた」夫の離婚請求が棄却された理由 。元裁判官が明かす、家庭裁判所の“裁量の実態”

 夫婦関係の破綻を認めながらも、夫が妻への生活費送金を停止したことを「兵糧攻め」と表現し、夫からの離婚請求を棄却した令和4年4月の家裁判決が話題となった。家事事件では裁判官の個人的価値観が判決を大きく左右する典型と言えよう。 “白ブリーフ判事”こと元裁判官の岡口基一氏は、この「離婚訴訟で請求棄却」について独自の見解を述べる(以下、岡口氏の寄稿)。 その判決に異議あり!,岡口基一

裁判官個人の価値観次第で離婚裁判は大きく左右される

 離婚訴訟は、裁判官の個人的な価値観が結論を大きく左右する。家庭裁判所の裁判官には、広い裁量が与えられているからだ。  日本の離婚裁判は基本的には、夫婦関係が破綻していれば離婚請求を認める。破綻した夫婦の婚姻関係をそのまま続けさせても仕方ない──。そう考えて、あっさりと離婚を認める裁判官もいる。他方で、結婚という人生におけるもっとも重大な「契約」をしたのだから、そう簡単に離婚を認めるべきではないとして、なかなか破綻を認定しない裁判官もいるのだ。  例外的に、夫婦関係の破綻が認定されても離婚請求が認められない場合もある。不倫やDV行為をして夫婦関係を破綻させておきながら、その者自身が離婚を請求するケースだ。自ら夫婦関係を破綻させた者に対する一種のペナルティとして、その者からの離婚請求をすぐには認めないということだろう。  もっとも、この場合でも夫婦関係は破綻しているのだから、離婚を速やかに認めたうえで高額な金銭賠償をさせたほうがいいようにも思われる。そこで、このペナルティを科さず、不貞した妻からの離婚請求を認めた東京高裁の判決も平成28年にあった。ここでも裁判官の価値観が結論を左右している。

月23万円の生活費を送金


おかぐち・きいち◎元裁判官 1966年生まれ、東大法学部卒。1991年に司法試験合格。大阪・東京・仙台高裁などで判事を務める。旧Twitterを通じて実名で情報発信を続けていたが、「これからも、エ ロ エ ロ ツイートがんばるね」といった発言や上半身裸に白ブリーフ一丁の自身の画像を投稿し物議を醸す。その後、あるツイートを巡って弾劾裁判にかけられ、制度開始以来8人目の罷免となった。著書『要件事実マニュアル』は法曹界のロングセラー