「一日1000件の殺害予告が…」スマホなき時代のデマ拡散。“殺人犯”にされたスマイリーキクチが今なお警鐘を鳴らし続けるワケ
1989年に日本中を震撼させた、女子高生コンクリート詰め殺人事件。主犯グループとして知られる4名の少年のほか、100名近くの人たちが事件にかかわっていたとされる。一方、SNS黎明期には、事実無根であるにもかかわず、「実行犯」に仕立て上げられた人がいる。
スマイリーキクチさん。『爆笑オンエアバトル』『ボキャブラ天国』など、現在でもなお語り継がれるお笑いバラエティ番組で人気を博した芸人だ。ネット掲示板の実行犯の欄には「菊池聡」(本名)が書かれ、瞬く間に殺害予告も届くようになった。2000年以降、スマイリーさんが法的措置をとり始めると事実が浸透していったが、現在もなお誹謗中傷は続く。
現在、スマイリーさんはインターネット上での誹謗中傷とはじめとする人権問題についての講演を全国で展開し、好評を博している。芸人としての輝かしい栄光を夢見た彼は、当時予想だにしなかったであろうこの着地点をどのようにみているのか――。
【本インタビューは202/1/16(金)開催の日刊SPA!主催ライター養成講座にて行われたものです】⇒ライター養成講座の開催レポート記事を読む
――当時、人気タレントがネットの誹謗中傷に対して真っ向から法的措置を取るのは異例だったと思います。
スマイリーキクチ:そうですね。1999年にネットの掲示板でまったくのガセネタが書き込まれました。私が最初に発見したのではなく、知り合いから教えてもらって存在を知りました。もちろん何ら身に覚えがないことであり、当初は極めて小さな火種に思えました。ところが、ネットの誹謗中傷というのは、デマであっても拡散され続けると対応ができなくなるんです。事実無根であることを証明するためには、事件化するしかないと思ったんです。
――「事件化しよう」と踏み切ったのは、どのような理由でしょうか。
スマイリーキクチ:私に対しての単なる悪口であれば、放置していたかもしれません。しかし、凶悪な殺人事件の犯人であると一方的かつ本気で憎まれていて、その集団から自分の家族を守るためには、事件として受理してもらいたいと思ったんです。
――当初、警察を含めて、周囲はどのような反応でしたか。
スマイリーキクチ:所属事務所は最初、事件化に消極的でした。事実無根であるとはいえ、タレントがネットの書き込みに対して法的措置を行い関わり合うこと自体が、マイナスのイメージに働くからです。また、警察に何度相談しても熱心に聞いてくれたとはいえない対応でした。「あなたはノイローゼになっている」などの言葉もあり、まるでこちらの被害妄想であるかのような発言もありました。
事件化してワイドショーで取り上げられるようになると、コメンテーターから「こんな書き込みは見なければいい」とか、ネットでも「(訴訟で)ひとりから100万円ずつもらって、2000万円を手に入れた」という二次被害を受けたこともあります。
ただ、孤立無援だったわけではありません。芸人の先輩である水道橋博士さんには、ある日キャンプに連れて行ってもらい、そこで「一連のことは、書籍の形で書き記したほうがいいよ」とアドバイスをもらいました。また、都内の名門私立である開成中学校・高等学校から「ネット上の誹謗中傷」をテーマとして講演してほしいと頼まれるなど、現在の活動につながる端緒もあり、周囲にはむしろ恵まれてきたと感じています。

スマイリーキクチさん
小さな火種のはずだったガセネタが拡散され続け…
警察に相談するも、被害妄想扱い
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki
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