デジタル

【プラチナバンドのカラクリ】知らないと損をする携帯電話の帯域とは?

モバイル評論家の法林岳之氏

“携帯電話のつながりやすさの決め手”と言われる「周波数」。最近では、ソフトバンクが「プラチナバンド」(携帯無線通信に最適とされる周波数帯域)でのサービスを開始することが話題になっているが、今後、キャリア同士の“つながりやすさ勝負”はどのような展開を迎えるのだろうか? 全キャリアユーザーが知っておきたい“周波数の基本のキ”を、モバイル評論家の法林岳之氏に解説してもらった。

◆携帯電話にもっとも適した周波数とは?

――そもそも“つながりやすい周波数”ってどういうことなんでしょうか?

法林:例えばオーディオのスピーカーを並べるとき、高音を出すスピーカーはちゃんと向きを調整しないと音が聞こえないけど、低音を出すウーハーはどちらに向けても音が響く……という現象がありますよね。携帯電話の場合も、周波数がちょっと低いほうが、ビルなどの障害物を回りこんで電波が届くので“つながりやすい”と言えます。具体的には、800MHz前後の帯域が、携帯電話にもっとも適しているとされています。

――それが、いわゆる「プラチナバンド」なんですね。

法林:そうです。ちなみにドコモやauは以前から800MHz帯を使っていたのですが、3Gと呼ばれる第三世代ケータイが登場したときに、世界共通で使える周波数帯域として2.1GHz帯を併せて使おうという流れになったんですね。なので、2社はもともとプラチナバンドを持っていた。ところがソフトバンクは、ボーダフォンが3Gの免許を取得したあとで携帯電話事業を買収しているので、3G用には2.1GHzの帯域しか持っていなかった。2.1GHz帯は電波に直進性があるので、ビルにぶつかったら反射したり遮られたりするため、携帯電話としては不利なんです。そんななか、ソフトバンクが“悲願”のプラチナバンド(900MHz帯域)を新たに取得しサービスを開始する……というわけです。ちなみに、「プラチナバンド」とは700MHz、800MHz、900MHzの帯域の総称です。

◆“プラチナバンド=劇的につながりやすい”わけじゃない!?

――3大キャリア各社が「プラチナバンド」を持つようになったということは、どこのキャリアでもつながりやすさはそう変わらなくなる……ということですか?

ソフトバンク

ソフトバンクのサイトでは、“プラチナバンドに対応した携帯電話”として、iPhone 4S、iPhone 4、iPad 2、新しい iPadなどを例示している

法林:実はそれほど単純な話ではありません。900MHz帯が使えるようになったので、プラチナバンドサービスを開始する7月25日からソフトバンクの携帯電話が劇的につながりやすくなる!なんてことはないんです。900MHz帯を取得したら取得したで、基地局を建てたりなど、それに合ったネットワークを作っていかなくてはなりませんから。

――基地局って、家を建てるみたいにポンポン増やすわけにはいかないんですか?

法林最近の携帯電話は電波同士が干渉しやすいので、それを解決するには職人的なノウハウが必要なんです。あと、設置場所を確保するのも実は大変。無線LANの親機を置くのとはわけが違います。ちょっと前の話になりますが、耐震偽装が問題になった当時は、「あまり建物をいじってほしくない」ということで、屋上に基地局を置くのを嫌がるマンションが増えて問題になりました。

――ソフトバンクとしては、プラチナバンドを取得してヤッター!……ではなく、むしろこれからが正念場という感じなんですね。

法林:その意味では、すでにネットワークを持っているドコモとauに、まだまだアドバンテージがあります。特にauの場合、3Gのスタート当初から800MHz帯と2.1GHz帯を並行して全国で使っていたので、すでに“10年以上のプラチナバンド歴”がある。ドコモの場合は、2.1GHz帯でFOMAのサービスを始め、後にFOMAプラスエリアとして800MHz帯を郊外や山間部で使うようになりました。ネットワークの作り方に関しては、auが一番計画的でうまいと思います。

※携帯キャリア各社の周波数利用状況(2012年6月時点)
⇒http://nikkan-spa.jp/?attachment_id=247941

携帯キャリア各社の周波数利用状況(2012年6月時点)

◆古いモデルでは新帯域の恩恵が受けられない!

―― 一方で、ドコモとauが新たに700MHz帯を取得し、「ダブルプラチナバンド」体制になるという報道がありました。

法林:スマートフォンやノートPC経由のデータ通信が急増し、この1年間で国内のモバイルトラフィックは2.2倍になっています。そのせいで“携帯電話がつながりにくい”と感じることが増えているはず。周波数帯域が増えると言うことは、単純に“道が広くなる”ということなので、それだけ通話環境は有利になりますね。もちろん、今後登場する“700MHz帯に対応した端末”を持っていることが条件ですが。

―― ……それは盲点でした。

法林ソフトバンクの900MHz帯にしても、プラチナバンド対応の端末は、基本的に今年の夏モデル以降なので、古いモデルを使っている人は何もいいことがありません(苦笑)。iPhoneなどの一部の機種は900MHz帯をサポートしていますけどね。携帯電話に新しい機能はいらない、という人も多いでしょうが、こと周波数に関しては、帯域が新たに増えたタイミングで乗り換えたほうが、賢いと思いますよ。 <取材・文/日刊SPA!編集部>




おすすめ記事