鬼嫁地獄からの生還
鬼嫁と呼ばれる人々がいる。
旦那を人とも思わず、悪鬼羅刹のごとく家庭で振る舞う。そんな嫁をめとってしまった日には、生きるも地獄、死ぬも地獄の日常が繰り広げられるワケである。だが、そんな生き地獄から奇跡的に生還した男がいた。
「4年前に友人の紹介で知り合って付き合い始めました。我が強いなぁとは思ってたんですが……」
と、語るのは先日、めでたく嫁から離婚届を突きつけられた今年で結婚2年目のDさん(会社員・33歳)だ。たかだか2年ほどなのだが、Dさんと嫁との結婚の歴史は、修羅の歴史そのものなのである。
「気に入らないことがあると、何をしてもとりつく島もないほどに怒るんです。なだめてもダメ、プレゼントで機嫌を取ろうとしてもダメ。とにかく収まるまで、僕の過去の失敗を並べ立てて罵倒するのです」
もともと、嫁の感情の起伏が激しいとは思っていたDさんだが、彼女は実家、Dさんは一人暮らし。親御さんが厳しかったのもあって、Dさん宅に泊まりに来ることもほとんどないままに結婚生活に突入してしまったために、嫁の日常に触れる度に戦慄が走る毎日だという。
「とにかく陰湿というか陰険というか……夫婦とは思えないことをされるのです。例えば、酔っ払って帰った時などは、わざと布団をずらして布団のないまま2時間近く寝たこともあります。ほかにも些細なことというか、僕のミスに対して“報復”が行われるのです」
チェーンロックをして家に入れてもらえないことはざらで、クリーニングに出しておいてと頼んだワイシャツが一枚も出されていなかったり、出張用のカバンに洗っていない下着を入れられたり……。そのたびに怒るDさんなのだが、嫁はその10倍以上の文句を並べ立ててDさんを罵倒するのだという。
そんなDさん夫婦にも、昨年めでたく長男が生まれ、これを機に嫁の情緒不安定も治るのかと思いきや……
「まず、長男の名前を僕に内緒で勝手に決めてたんです。さすがに僕だけでなく、僕の親も怒りますよ。それで両家入り乱れての戦争が勃発です。まぁ、娘が娘なら親も親で、『そちらの義母さんは出産まで娘の面倒を見に来なかった』だの『結婚式のカネはどっちがどれだけ出した』だの、今や両家は冷戦状態です」
さらにDさんに追い打ちをかけるような行動に嫁は出る。
「長男が生まれてから半年が経とうとした頃のことなんですが、嫁が唐突にお受験をさせたいと言い始めたんです。僕はそういう受験とかをゴリ押しするのはイヤだったんで、さすがに怒りました。ですが、彼女は息子の未来予想図とも言うべき、詳細なシュミレーションを作って僕に突きつけたんです」
その未来予想図とは、何歳でどの学校を受けて合格と不合格のパターンにわけて、その後の人生を枝葉のごとく書き連ねたものだったという。
「さすがに呆れてものが言えなかったですね。怒鳴りつけましたよ。いい加減にしろと。僕はのんびりした人生を送りながら、いろんなことに興味をもってもらって、自分の適性を見つけ出せる大人になってほしいと思ってるんですが、嫁にはそういう感覚がないようで……」
そしてその翌日、朝目が覚めると神妙な顔つきの嫁が食卓でDさんを待ち構えていたのである。
「いきなり離婚届を突きつけられたんです。ものすごく冷静な顔をして、『あなたと一緒にいたら、子供の将来が怖い。考え直さないなら、自分の名前を書いて出せ!』って言うんです」
開いた口がふさがらない日々を続けてきたDさんだったが、この一言で悟りの境地に至ったという。
「なんか吹っ切れましたね。あ、もう、我慢しなくていいんだって。離婚届を出されたことで気が楽になったんです。『わかった。じゃあ、(判子を)押すよ』って言ったら、向こうが動揺し始めちゃったんです。この日から立場が逆転しました」
自ら蒔いたタネが思わぬ方向にいってしまったわけである。現在、Dさんはそれなりに平穏な暮らしをしているという。
「まぁ、まだ親同士は仲が悪いというか、ギクシャクしてます。でも、さすがに離婚届騒動で懲りたのか、嫁もずいぶんと普通になりました」
そんなDさんには第二子が夏に誕生予定だという。雨降って地固まるというわけではないのだが、臨界点に達すると鬼嫁も、その被った般若の面が割れるのかもしれない。
「結局、この人は何を言っても言いなりになると思わせてた僕にも非があるのかもしれません。鬼嫁の対処法ですか? う~ん……帰ってくるな!っていうのは、帰ってこい!ってことなんです。一度、本当に帰らないでみるといいんじゃないですかね。けっこう動揺するはずです」
荒療治に勝る治療法はないのだろうか……。<取材・文/週刊SPA!取材班>
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